園芸という趣味と休暇を考える。休みのない園芸業者は確実に滅ぶ。

一息つくことで植物との暮らしが始まる

以前、Twitterでこのような意見をいただきました。

この意見、まったくその通りだと感じます。

有給休暇取得が義務化されるというニュースが記憶に新しいですが、夫婦共働きで趣味の時間も作り出せるような時間がない昨今。
園芸という趣味もまた、一息つくことのできる時間がないと尻すぼみになる…と僕は考えています。

仕事しないから経済が良くならないんだ!は間違い

ある日、園芸関係者から「休んでばかりいるようになったら、日本人は終わるよ!仕事しないから経済が回らないんだ!」という声を耳にしたことがあります。
そのときは笑ってスルーしましたが、よくよく考えてみれば、その言葉は自分の首を絞めていることと同等です。
余暇がなければ園芸という趣味に打ち込むことはなくなるだろうし、当然、園芸という商売で飯を食べることもできなくなる

一般的に考えれば、ガーデニングにしろ、家庭菜園にしろ、ベランダ園芸にしろ、作業を行えるのは陽のあるうちのある程度まとまった時間が必要です。

園芸関係者は、客がどのような環境や行動において購買意欲を持つのかをしっかりと向き合う必要があります。
それが分かっていれば「休んでばかりいたら…」なんて言葉は冗談でも口から出てこないはずです。

若者が定着しない?そりゃそうでしょ。

給料も低く休みなし。
いわゆるブラックな仕事を強いられることが多い業界ですが、それこそが美徳とされるのです。
でも、それを続けていれば担い手が減るばかりだ、というのが僕のスタンスです。

2016年の内閣府の「就労等に関する若者の意識」調査では、

仕事と家庭・プライベート(私生活)のどちらを優先するかについてみると、「仕事よりも家庭・プライベート(私生活)を優先する」と回答した者は63.7%であり、平成23年度の調査時における52.9%よりも多かった。 また、男女別に仕事と家庭・プライベート(私生活)のどちらを優先するかについてみると、「仕事よりも家庭・プライベート(私生活)を優先する」と回答した男性は58.3%であり、女性の69.4%より少ないものの、平成23年度の調査時よりも10ポイント以上多く、半数を超えていた


引用元: 特集 就労等に関する若者の意識|平成30年版子供・若者白書(概要版) – 内閣府

とあります。
プライベートを優先する若者が増え、企業の採用では売り手市場の昨今
休まぬ企業はどうなるか、みなまで申さぬとも答えは明白です。

さらには農業は労働基準法の「労働時間規制」の適用除外とよく言われます。
対象となるのは、

土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業

など。
これらは天候などの条件によって仕事の内容が変わってくるので、工業のように画一的な規制は難しいという理由から制定されたもの。
ところが現代では、あらゆる作業が機械化され、それにより農業も規制対象になる可能性があるという指摘もあります。

労働基準法が施行された昭和22年に比べ、農業の機械化がかなり進んでいます。スマート農業の推進により、これからさらに機械化が進展することが予想されます。 林業は、かつては農業と同じく、労働時間規制の対象外でした。しかし、作業の機械化が進み、労働時間管理の体制が整いつつあるとの理由から、平成5年の法改正により、労働時間規制の適用除外事業から外され、他の事業と同じように労働時間規制に従っています。 農業についても、今後の展開次第では、労働時間規制の適用除外が撤廃され、規制対象となる可能性があります。


引用元: 農業従業員の労働時間

鉢物生産をはじめとする施設園芸は農業の中でも近代化が目まぐるしく進む分野。
国内外での競争と「働き方」の変化や、少子化による人材不足の影響でこれらの適用除外はいずれ問題となると僕は思います。
というより、問題にしなければなりません。
なぜなら、人材の獲得すなわち生産競争。
いくら機械化が進もうとも、新しい知識を持つ人材の再生産がなければ機械も動きません。
もっとも機械も導入できないで、何もかもを人力で済まそうとする古い体質では若者が逃げます。
なぜならその分、プライベートの時間が削られる恐れがあるから。
若者が逃げる企業に未来はありません

自ら「楽しい園芸」を実践しない生産者は滅ぶ

そのうえ、変化のスピードが早くなっている時代、ただただ農場で仕事をしているだけでは、時代に取り残されるだけです。
如何に各個人が自主的に情報を取り入れ、仕事に反映できるかが重要となるはずです。

バリバリと仕事をする自称「園芸研究家」も個人的には信用していません。
園芸研究家だけでなく、バイヤーや生産者も言わずもがな…。
自分が実際に楽しく、誰かに共感してもらえるコンテンツこそを市場に流通させるべきです。
果たして、育ててつまらないと感じる植物を市場に流す必要はあるのでしょうか。
イヤイヤつくりたくもないものを休みなく作っても、果たしてそれが消費者に受け入れられるのでしょうか。

実際に生産現場で働いてみて、無駄な業務があると感じる場面は多々あります
加えて、生産品目を工夫すれば業務の作業量も減らせるのだとも。
そのためには各種イベントに足を運び、消費者が求めているモノを自分のアタマであれこれ考え、少しでもアウトプットすることが必要です。

もはや他国と比べても賃金の低さが露呈した今日
休みなく働いて、時代に取り残されるよりも、休日を増やして、根強く分母の少ないファンに力を注いでいくほうが結果的に質も量もクオリティが高くなるのではとつくづく思います。

現代人に多肉植物栽培が好まれる理由

どんなに忙しくても、植物を世話するという方もいるだろうし、先進的な機器を導入して植物の管理をシステマチックに行う…という人もいるかもしれません。

ところが、多くの人は休暇がなければ、必要最低限の生活行動しか行いません
ひとり暮らしの僕もそうですが、仕事のある日は掃除・洗濯・炊事など身の回りの用事を済ますことができれば、よくこなせたほう。
植え替えや剪定など、生活とは直接的にかかわりのない行動はどんどん後回しになってしまいます。

その結果、日々の水やりなど、植物にとって重要なメンテナンスを怠るようになり、ついには枯れる…。
最後には「私ってサボテンも枯らしてしまうオンナなのね…」とやり場のない虚無感に苛まれるのです(笑)。
いいえ、サボテンを枯らしてしまうことが問題なのではありません。
サボテンと向き合う時間がないのが問題なのです。

数年前から多肉植物をはじめとする、乾燥地帯の植物が流行した理由はまさにここにあって、

  • 水やり
  • 肥料やり
  • 植え替え

など、日々のメンテナンスが少なくて済むことが、現代の忙しない生活にマッチしたのです。
2010年頃まで、室内装飾に用いられていた観葉植物の類とは違い、少し水やりを忘れたくらいでは、乾燥地帯の植物が簡単に萎れることはありません。
必要なのは、日当りの良い場所に置くこと…と、少しの適切な管理くらい。
したがって、出窓の台などに置いておけば徒長することもなく健康的に栽培が楽しめるのです。

そして、そのうえで必要なのが植物と触れ合うことのできる「時間」なのです。

以前、とあるイベントで世界的に活躍するイギリス人育種家の講演をききました。
コンパクトで管理もラクな植物がもてはやされるのは、世界的な傾向であるとのこと。
仕事や子育てに追われる女性など、忙しない生活の中でも暮らしに緑を取り入れたい…。
そう考えている方が日本のみならず、あらゆる国々に存在するということ。
ゆえに今後も「時間をかけずに楽しめる」「置き場所に困らない」植物が好まれる傾向は続いていくように思います。

いつもリアルな消費者目線であるために

本日から大型連休(10連休)!

この話題についてはまだまだ書き足りないことがたくさんあります。
今の僕にできることは何かを考えると、雇われているからこそ、しっかりと休んで、しっかりと楽しく園芸を満喫しながら学ぶこと
そして現場に活かすことが重要だと感じます。

以前もこのブログに書いていますが、植物が売れないのは消費者に受け入れられていないから。
「飽き」や「ニーズのなさ」に気づかずに、ずっと同じ商品を流していても、先細りになるのは当然のことです。
リアルな消費者目線を養うためには、自身もいち消費者でありたいと、あるべきだと、僕は思うのです。

本日から10連休。
園芸業界は物日のために、GWも休みなし…という業者も多いことでしょう。
それでは何も解決しません。
しっかりと働くためには、しっかりとしたオフの日が必要だと僕は強く感じます。

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