これまで3回にわたって「母の日」に関連する記事を投稿しました。
「農業の働き方改革」の資料を読んで思うこと
これまでに投稿した記事
1つ目は、若者が園芸業界へ入らなかったり、いなくなってしまうことについて。
2つ目は、母の日商戦で経験した若き頃の「良き思い出」について。
3つ目は、「母の日」の今後について考えさせられるツイートについて。
しきりに「人材不足」と言うけど…?
記事を連投しようと思ったきっかけは単純に「人材不足」の影響を、僕自身も受けつつあるから。
いまや園芸・農業関連の企業だけではなく、多くの企業において人材難が深刻化しています。
この人材不足がますます深刻化したら…と考えたら、夜も寝られなくなるほど恐ろしくなったのです、マジで。
ところが現場ではただただ「人がいない」と騒ぎたてるばかりで、実際に何か施策をしてるという企業は殊の外、あまり聞きません。
それはどういう意味を持つのかと言えば、それぞれの企業が結局は少ない人数でなんとか仕事を回している…というのが現状だと思うのです。
しかし、そのようなギリギリの状況では長く続きません。
人手が不足している企業は、あらゆる方策を用いて、人材を増やすか、仕事を減らさないと回りません。
そればかりか、倒産が相次ぐのではないかと危惧しています。
そんな状況をどう回避すればいいのかを自分なりに考えた末に、上記3本の記事を投稿したのです。
農業が選ばれる産業にならなければ→!!!
ところが、これまで僕が考えてきたことはすでに議論され、いくつかの企業で実践されている模様。
それを知ったのは農林水産省が発行している「農業の「働き方改革」経営者向けガイド」というパンフレットでした。
上記リンクに公開されている「農業の「働き方改革」経営者向けガイド(PDF : 1,443KB)」を読むと、序盤から痛烈な言葉が並んでいます。
働き方を見直し、若い人も働きやすい、作業を省力化する最先端の技術を活用してみる。労務管理の考え方を導入してみる。生産のやり方も働き方の改革につながるものに変えていく。
引用元: 農業の「働き方改革」経営者向けガイド(PDF)
そうした努力を今行えば、「やりがいのある」「かっこいい」「稼げる」農業を実践することにつながります。農業「経営者」としての意識改革が、人手不足の今こそ必要なのです。このことは、経営の大きさによって違いはあるものの、法人経営でも個人経営でも同じです。
人手不足の時代に自分が思うような経営を行うには、他産業との人材獲得競争に勝ち抜かなければなりません。農業は「特別だから」という考えを変えて、いかに農業が「選ばれる」かに向けた努力を行いましょう。
この文章に問題点がグッと凝縮されているように思います。
「農業だから仕方がない」という言葉がどこまでも延長され、やがては「働きづらい」「格好悪い」「稼げない」農業に転嫁されていったのではありませんか。
そして気が付けば、他産業から比べると、とんでもなく低いスタートラインから人材を確保せざるを得なくなる。
そのうえでパンフレットはこう続きます。
「選ばれる」経営体に共通するのは、経営者の意識が高く、どうしたら生産性が高く、かつ「人」にやさしい環境作りができるかということを経営者が考え、取り組み、実現していることです。これが「働き方改革」なのです。
引用元: 農業の「働き方改革」経営者向けガイド(PDF)
この一文はとても恐ろしい。
いまこそ働き方改革を志向し、生産性をあげ、人にやさしい環境づくりができなければ、選ばれなくなる。
逆説的にそのように説いているのと同意で、僕もそのとおりだと思います。
就業者が高齢化すれば質量ともに低下する
人材不足から「シルバー人材」の方々にお仕事を依頼する企業も増えていると聞きます。
または繁忙期にだけ手伝いに来てもらう地域の方々も高齢化し、けれど仕事の内容はかなりの体力仕事だったり…。
そんな環境下で若者に負担が及び、かつ低賃金の休みなし。
結果、若者の離職が相次ぎ「最近の若いもんは根性がねぇ」などと宣う。
でも、そう言っていられるのも今のうちです。
同パンフレットには今後の農業就業人口にも言及。
農業就業者の平均年齢がもはや70歳に近づこうとしているとき、今までと同じ働き方は難しくなると、誰が見ても分かるはずです。
このままだといずれ、商品の量やクオリティにも影響が出てくるのは必至。
鉢物で言えば、病害虫がついているのは当たり前。
商品のサイズ感にバラつきがある。
ずっと同じものを生産し、陳腐化→消費者との需要にギャップ…などなど。
あれもこれも海外メーカー品
そうこうしているうちに、生産や流通方式に改革の及んだ海外産の生産物が市場に溢れても、なんら驚きはしません。
それが当然の成り行きだから。
「鉢物は土がついているから、流通にコストがかかる」と言われても、それが解決されたら?
切り花よりも長期にわたって質を保てることから、輸送面で法的・技術的にも革新が及べば、堰を切ったように海外産が流れ込むと僕は考えています。
クオリティが高く、かつ幅広い分野の植物を選べるカスタマイズ性さえ整えば、園芸文化の高い日本の市場が外国の企業に目を付けられるのはごく自然なことです。
海外企業が主体の品目が園芸店に台頭しても、それは日本の生産者が衰退するべくして衰退させたといっても過言ではないですよね。
だって、あらゆる面で活躍できる若者を業界へ取り入れられなかったのだから。
「若者目線」のなさに危機感を覚えるんですけど?
是が非でも、若者を園芸業界に取り入れなければならない理由。
それは言うまでもなく、次代の消費を担うのは、若い人たちだから。
いくら園芸市場の消費者が中高年世代が主要とはいっても、 です。
そんな若者の動向を知るにはやはり、若者の意見も反映する必要がある。
そんなとき、気軽に話を聞ける「若者」と呼ばれる人が傍にいなければ、その時点で今後の経営は危うい。
いずれ主要な消費者層は下降していくのであって、その人口も減っていくのだから。
現在どのような植物が世界的に流行しているのか。
今後、どのような変遷を辿るのか…。
もはや人材獲得の次に検討しなければならないことが山積しています。
それなのに「若者が入らない」なんて…。
オワコン…。
加えて、インターネットが普及し、ひとくちに「園芸」といっても、その分野は多岐にわたっています。
以前もこのブログに書いたことを再掲します。
時代の変遷により、要請される植物の種類は当然ながら変化がつきもの。 住環境や消費行動にも影響があるのは当然のことです。 もちろん、省エネの流れに即した栽培方法を園芸界もしっかりと考えるべきであり、否定するものではありません。 問題なのは、「一時的なブームだから」と変化を横目に傍観していることや、旧態然とした仕組みが続いていることが危険なのです。 僕はインターネット上で投稿される植物たちと、実店舗に並ぶ植物たちのギャップが、果てしなく解離していることに恐怖を覚えるのです…。
引用元: 鉢を買っても「置き場所がない」ということを考えてみる。住空間の変化で園芸も変わる? | ボタニカログ
町の園芸店へ足を運ぶたびに、数10年前に流行した植物が所狭しと並んでいるのをみるにつけ、考え込んでしまいます。
僕の信条は「欲しい植物は自分の足と手と目を使って選ぶ」というもの。
ところが、欲しい植物が町の園芸店にはないのです…!
それと同時に、ネットで多くのユーザーが言及している植物が皆無。
僕も同様に、欲しい植物は通販やアプリで注文するというサイクルが、ここ数年で多くなりました。
いずれこの「多様化」についても記事にしようと思うのですが、この現象はもはや商品のラインアップに「若者の意見」が反映されていないのだと考えています。
実店舗では、自分の身体で出歩ける範囲の購買層に向けて商品がラインナップされているのでしょうが、しかし昭和時代の植物が平然と並ぶ様は危機感しかありません。
徐々に減るだろう来店者数について、販売側はいったいどのように考えているのでしょうか?
あらゆる園芸店は、一部の小さなスペースでも良いから、現状のブームに即した植物を取りそろえる必要があります。
もっとも、若者を介した情報収集が前提です。
僕がいま、必要だと思っていること
まず、誰もが働きやすい環境をつくること
ハナシが蛇行していますが、企業はまず若者の定着化を。
激化する他分野との人材獲得競争に晒されていることを認識し、今いる若者が離れない施策を早急に打つべき。
古今東西、どんな組織も若者が若者を呼ぶのであり、若者が次々に辞める職場は相当にヤバいです。
何かがオカシイのでは?
さらには女性や高齢者が働きやすい環境を少しずつでも良いから構築していくべきだと考えます。
また「農福連携」というキーワードもある通り、障がい者の方々も含め、多くの人が働きやすく、なおかつ継続して仕事に従事できる環境でなければ人材難の波に抗うことは不可能です。
では、どうすれば良いのか。
先にも紹介したパンフレットにもその提言がなされています。
しかも段階別に。
一部「?」という記述もありますが、作付け品目別に取り組むべきことを指南した資料も併せて読むと、なるほど薄らぼんやりと農林水産省が提言している意味の輪郭が見えてきたりもします。
一連の資料を読んで、個人的に参考になる部分がいくつもありました。
ということで、僕の周囲だけでも衰退から守れるよう行動し、今後も発信していきたいと思います。