初開催の「天下一植物界」へ!若者による次代の園芸を垣間見た気がする。

天下一植物界、行ってきました

行ってまいりました。

今回が初開催の植物イベント「天下一植物界」へ!

「天下一植物界」ってなに??

面白いイベント名なので「?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
2013年から大阪で開催されている植物イベント「ボーダーブレイク」がもとになっています
公式サイトには、

“ジャンルの壁を取り払った植物総合イベント”を標榜して始まったBORDER BREAK!!はお陰様で7年目を迎え、今や日本各地で日々、“BB的”な催しが開催されるようになりました。次に私達が目指すのは、植物のディープな面白さ、一見しただけではわかり辛い生態的な魅力を、より多くの人に伝えられるようなイベントです。そのためには、商業者だけでなく、研究者やクリエイターなど、植物に携わる人間が一丸となって取り組む必要があると感じています。

引用元: ホーム | BORDER BREAK

とあり、深くて面白い植物の世界を多くの人に知ってもらいたいというコンセプトのイベントだとのこと。

開催前から各所で話題となり、僕も「京セラドームで何かが行われる…」という段階から注目。
運営者さんが公式Twitterを開設した時点で参加を決めました。
…ところが、某ジャニーズアイドルのイベントが同日に、しかも同会場の京セラドームで行われるということで、一瞬、ネットがざわつく(笑)。
もしかしたら宿が取れないかもしれない…という不安が渦巻く中、僕は夜行バスで0泊3日の大阪ツアーを強行したのです。

決して混んではいません

天下一植物界の入場料は、10時からの先行入場が3,000円。
11時30分からの一般入場が500円です。
特に欲しい植物のない僕は12時ごろ、一般で入場。
入り口で入場料を支払うと、こんなチケットをいただけました。

こういう試みは非常にうれしい。
このブログにも何度か書いていますが、いまや自らの行動をSNSに投稿し、それがまた拡散する時代
どこかへ行ってきた「証」となる、ちゃんとしたチケットをもらえること…それだけで好感が持てます。

イベント情報は主にSNSで発信、という意味

会場はすでに大勢の方々が来場し、熱気に包まれていました。
とはいっても、多くの人でごった返し、集中して植物を観ることができない…ということはなく、自分のペースでゆっくりと回れる具合

お客さんをみて感じるのは、とことん若年層の方が多いこと(男性多め)。
規模の大きな植物イベントに訪れるのは、大概が中高年層の方々が主体ですが、このイベントは違います。
運営も若年層の方々だったし、来場者側も30代くらいがメインなのではないでしょうか。
きっとこの世代の方々は、基本的なイベント情報はSNSなどを介して集めているのだろうと思います。

そんなSNSには、出店する店舗の基本情報や、そのお店でどんな植物が販売されるのかを確認できる。
一部の出店者の方は、購入後のフォローはSNSで受け付けているとも仰っていました。
SNSを使うことができれば、これほどまでに多量の情報を取り入れられ、かつ開かれたツールはありません。

…が、それらのメディアを扱うことができなければ、一向に「天下一植物界」なる不可解な(すみません)イベント名から、足を運ばんとする次なるステップに繋げることができません。
その点、ある種のフィルターになっているような気がします
良い意味でも、悪い意味でも。

会場には多様な植物が並んでいて…

次いで、取り扱われる植物も多種多様です。
多かったのはアグラオネマやビカクシダをはじめとする熱帯植物や、人気のコーデックス
はたまた球根植物から木の実、盆栽、植物写真など、書ききれません。
ひとつのお店のなかでも多種類の植物が並び、同じ種類の鉢は数鉢程度
イベント全体としても、お店単位でみても、割と統一感が取り払われてカオスなのです(笑)。
まさにボーダーブレイク

だからこそ、 あらゆる側面から植物を見つめなおすことができる
会場を1周したとき、そんなふうに感じました。

それぞれのお店が思い思いの植物を持ち込んで、独自の価値観を通した品揃え…。
同じ植物ではあるものの、提案される視点が少し違うだけでだいぶ違います
例えばビカクシダなら、吊るすのか、鉢に植えるのか、板付けにするのか。
板付けならば、サボテンの骨か、流木か、単なる合板かのチョイスで、見た目の印象も変わってきます。
種類によるビジュアルも豊富で、選び甲斐がある。
自らのライフスタイルにちょうど良く合わさった植物を選んで買えばいいワケで、大量に生産された定番モノのビカクシダをここで買う必然性は高くありません。

なぜか。
それは、どこにでもあるような植物を簡単には買うことができないから。

市場に出回らないから、街中で見かけない

ネットの登場以降もその傾向は変わらないどころか、むしろ強くなっていると僕は思います。
いまや、いつでもどこでも植物をインターネットから購入することができる時代
オンラインショップだけでなく、オークションサイトやフリマアプリなど、ひとくちに「ネットで買う」と言っても、その経路は多岐にわたります。
しかしその実、本当に希少な植物はネットでもあまり出回っていないのです。

具体的にはこんな感じ。

天下一植物界の出店者をみれば、基本的に、

  • 生産や卸を主体
  • いわゆる定番商品や普及種の取扱いが少ない
  • 小売りをしていたとしても、オークションサイトやオンラインショップ、イベントなどで販売

という業態であり、扱うのは街中の園芸店や生花店でまず見ることができない植物のオンパレードです。
否、運よく出会えたとしても高価だったり…。

その理由はあまりに希少性が高いので、まず一般的な消費者が買わないことが予想できるから。
ゆえに市場(イチバ)でも出回らないか、その価値を低く見積もられる恐れがあるのです。
ならば一部のコア層を主体に販売することが優先されるので、価格の判断が渋い販路は忌避される。
結果、趣味人(消費者側)が自ら広く情報を集めつつ、積極的に購入意欲を示さなければ見つけることができないのです(そこに合致しているのがヤフオクなどのネットオークションだったり)。

その他、鉢物生産の主要農家が、前述の「ある種のフィルター」に引っかからないので、あまり注目されていない。
主要農家は購買力のあるシニア層をターゲットとしているので、目にもかけないわけですが。
この件についてはいつかじっくりとブログに書きたいです。

SNSがあるからこそ高まる購入競争

また、各種SNSでの発信も輪を掛けて活発です。
以下は今回の天下一植物界に出店した業者さんのリスト。

〇熱帯草屋”LA” @souya938
〇Green Note @greennote77
〇ISHII PLANTS NURSERY @ishiiplantsnursery
〇TEAM BORNEO
〇Azul Aquarium @kucing73
○Snow Drop @kazuo8741
〇Begonia Garden @begonia.club
○KOKESHINOBU-LOG @kokeshinobulog
〇Tanakay @tanakay3
〇STRINGEPLANTS @itome_sp_
○花宇宙 @kunzo_n
〇葉風空間
○Bela Vista Orchids @hiroko_mibaya
〇Heat Wave & 山水苑@heatwave888
〇SPECIES NURSERY @speciesnursery
〇喜晴園 @kiharuen
○食虫植物探索会
○つるかめ山草園
○mog2 & sin @mog._._.mog@sin_brass_
〇Asiatic Green @asiaticgreen
○Mundi Flora Farm
〇STRAIGHT @straight_books
〇小林商店 @kobayashi_tomohiro
○Bar Chlo @chloro_kuro
○UNDERLEAFDESIGN @underleafdesign_official
○ボルネオギャラリー
○Light-Box @film.lightbox
○Dubhe @dubhe_jp
○cokeco @cokecoleather
○necomoss @necomoss
○Hiro’s Pitcher Plants
○松本洋蘭園
○はちのへ洋ラン園
○TALLMAN @aquarium_tallman
○高橋洋蘭園
○和歌山オーキッド
○植物屋 Dohraku @shokubutuya_dohraku
〇芳明園
○南九州植物園 @nan9.botanical
○浦部陽向園 @yokoen_tk
○杜若園芸 @tojaku_engei
○ERIOQUEST @erioquest
○Studio.zok @studio_zok
○J & M Orchids
○大樹園 @daijuen96
○宝生園 @takaraomoto
○豊明園 @omoto_man
○vandaka plants @vandaka_plants
○陽春園植物場 @yoshunen
○Succulent Box Ruchia by kuichi @box_ruchia
○Flora of Madagascar
○TK便 @takkun317
○ピクタ @picuta_official
○市野伝市窯
○Plants work @plants_work
○海洋自然博物館マリンジャム @marinejam_kaiyo
○純胡椒 @senninspice
○アクアデザインアマノ @aquadesignamano
○Mosslight-LED @mosslight1955
○日本植物園協会

引用元:天下一植物界インスタグラム

ヨコについている青文字はインスタグラムへのリンクですが、およそ70%以上もの業者さんが積極的にSNSを使って発信しているのです1
SNSで発信することによって、不特定多数の人へアプローチをかけ、独自のブランドを構築。
…しているようにも見えますが、消費者がその情報へたどり着くためには、先述のとおり、ある種のネットリテラシーが必要となってくる。
情報感度が高く、販売される植物の波長が合う、ほんのわずかな人のみが貴重な植物を享受することができるのです。

エリオクエストさんで購入した「アルブカ ブルースベイエリ」の球根

植物の母数も依然として少ないので、自ずと購入できる人数も限られてくる。
その結果、ネットオークションでは高値で取引され、専門店においてはオンラインでも実店舗でも、あっという間に品切れに。
つまり、SNSというメディアによってその植物の存在が知れ渡り、拡散し、植物を得るための競争力が高くなった…というのがひとつの見落とせないポイント。

最終的に、そんな植物を手に入れた、はたまた栽培しているという「コト」自体がステータスとなり、昨今の「インスタ映え」にもつながるのです。

以上を踏まえて、天下一植物界。
ここでは数多くのレアでハイグレードな植物を目にすることができます
植物ごとのカテゴライズもほぼ無いので、新たな発見も望める
SNSで見かけるあれやこれやも、実物を自分の目で見ることができる。
身銭を払い、足を使って大阪まで来る意味がありました、ほんとうに。

「使い捨ての効く植物」はもう見向きもされない

僕が会場を歩いて感じるのは、長く付き合える植物がほとんどだったということ
先にも述べましたが、決して安くはありません。
そしてまた、決して従来の園芸植物のような華々しさもどこか感じられません(笑)
だけれど、ゆっくりとした成長を傍らで見つめ続けることができる植物が大半を占めているのだと、感じたのです。

つまり「枯らしてもまた買えばいいよね」と思ってしまうような、使い捨てが効く植物が皆無なのです。

花を観て「素敵!」「キレイ!」「可愛い!」と連呼する光景は、植物イベントにはつきものですが(笑)、そんな言葉たちだけではあらわすことのできない植物たちが、天下一植物界の会場には、犇めいて並んでいるのです。

より大きく、より派手に「改良」された花々は、長く共に暮らせばどこかポップで、凄まじいスピードで流れていく日々にちょっと邪魔になることも。
洋服で例えるなら、カジュアルな花柄模様が次の年にはダサく見えるとか、攻め過ぎたデザインが変化に対応できないことに似てるかもしれません。

そんな植物はもう、若者には見向きもされなくなりつつあります

僕が会場でみたのは、観賞される視点が複数あり、かつシンプルなので、いつまでも長く、共に暮らせる植物が多いように思うのです。

少しずつ大きくなる樹のフォルムを愛でたい。
葉の斑の入り方が美しい。
質素な花だけど、そんな素朴さが性に合う…。

などなど、きっとみんな、いろんな価値観を頼りに植物を探している
そこに付加できるストーリー性と育てる意味を探している
だからこそ、大々的に宣伝をしなくても、あそこまで多くの人が足を運ぶイベントになり得たのだと思うのです。

若者主体イベントだからこその空気感があった

まとめます。

このイベントに集った大半のひとたちと僕はきっと、同世代
同じようなタイミングで、同じような情報に触れ、植物の面白さを理解してきたのだろうと思います。
そしてそこに、同じような世代の販売者が活躍している姿に、触発されない訳がありません。
僕も同じように「園芸業界」という枠組みで仕事をしている手前もありますが…。

そこで話される植物の知識量や、植物を手に入れんとする欲求
そして植物を販売し、天下一植物界というイベントを運営、または出店しようとする行動力
どれも僕には足りない部分であり、尊敬してしまう部分でもあります。

会場で読むことのできた本たち。古いものから新しいものまで良書が並ぶ

とにもかくにも、このイベントにしかない、独特の空気感がそこには流れていました。
それこそまさに、それぞれの植物愛を戦わせ、成長させる「天下一植物界」だと。
行ったことで得られるものは、単に植物や情報だけではないと、僕はいま、断言できます。

  1. こんなにもインスタグラムが活用されているとは知らず。慌てふためきながらも当ブログのインスタグラムアカウントを開設したのはココだけのハナシ []

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2 件のコメント

  • 毎年大量に生産され、それこそ消耗されていくと呼べる植物たちであっても色んな価値観で向き合うことができて、ストーリー性だって育てる意味だっていくらでも見出せるので”こういう植物たちだからこそ”という強調のされ方を見ると少しんん?となってしまいます

  • もにちんさん。
    コメントありがとうございます。

    僕も、もにちんさんの意見にほぼほぼ賛同しています。
    以前、このブログの記事(https://botanicalog.net/archives/9006)に、
    もにちんさんと同じ考えを記しました。

    天下一植物界でのエントリーに書いたのは、主に「若者」について。

    天下一植物界に集っていた人たちには
    ①そのような価値観がある人(主に若者)が一定数存在し、
    ②SNSをメインとした情報の拡散があり
    ③会場のほぼすべての売り手が多品種少量販売だった
    という、紛れもないその事実を目の当たりしました。
    そのうえで、(僕も含めた)従前の園芸屋は、そこからどのように考え、アクションを起こすかを
    提起したつもりです。

    逆に言えば、植物と対峙する方法や観賞・栽培方法、そして価値観と
    若者に習うべき点はたくさんあると感じたのです。
    その中核をなすポイントは「永続性」であり、
    近年流行していいるハーバリウムやドライフラワーのスワッグも、
    より永続的に観賞できるという、経済的にも優しい「価値観」が消費者の心を突いたのだと考えています。

    つまり「使い捨ての利く植物」とは、
    買って損をする植物か、得をする植物か…ということ。
    それらはSNSなどによって購入した個人のパーソナリティの確立へ使えるかどうかも含め、
    様々な要素が複雑に絡んでいると僕はみています。

    ただし様々な価値観を持った人がいるのも理解しています。
    そもそも、植物のみかたは人ぞれぞれであり、決めつけるものではありませんよね。