最近よく聞く「アルブカ」ってどんな植物?育て方とケープバルブの行方

数年前のとある日。
千葉県の某多肉ナーセリーへ足を運んだとき、それはそれは高額な球根植物を買ったのです。

アルブカってなに??

はじまりは「アルブカ・フミリス」

「これ、いまから流行るから手元に置いても面白いよ」

そんな口車に乗せられて、野口英世が何人か僕の財布から消え去りました。
ところがいまやメルカリで500円くらい出せば、それなりの株を買えるようになりましたとさ…(涙)。

何を隠そう、その球根植物の名前は「アルブカ・フミリス(Albuca humilis)」。

当時は「ナマクエンシスかな~」とかなんとか言われて大切に育てていたのですが、全然違った!(笑)。
でも確かに、流行りつつあるよ、うん…。

人気のアルブカは…?

実はこの「アルブカ」。
最近では「珍奇植物(ビザーレプランツ)」の台頭によって、あらゆる園芸店や生花店でみられるようになりました。
アフリカ南部産の球根植物を総称する、いわゆる「ケープバルブ」にもあたると認識しています。

僕の記憶では、2015~16年頃くらいにオランダで作出されたという「アルブカ・スピラリス・フリズルシズル」をデパートの生花店でみたのを覚えています。
アルブカとはじめて出会ったのはたぶん、その頃。

なかでもいま、特に人気なのが「アルブカ・コンコルディアナ(Albuca concordiana)です。

信じられないほど、螺旋状に葉をくねらるその様はまさに「珍奇」と言うほかありません。

その他、冒頭の「アルブカ・ナマクエンシス」や、「アルブカ・ブルースベイエリ」なども、専門店でみることが多くなりました。

アルブカ・ナマクエンシス

ということで、今回はアルブカについて記録してまいります。

以下より、僕の経験から偉そうにモノを語っています
栽培方法は人それぞれですし、環境によっても成果が異なります。
それらをご了承いただいたうえで読み進めてください

アルブカってどんな植物?

まず、アルブカは南アフリカなどに約90種類以上あるといわれています。
以前はヒヤシンス科に入るとされていましたが、最近ではキジカクシ科に部類されています。

アルブカ・フミリスの花

花はやや地味めなものが多いのですが、花期には無数の花芽があがり、その姿は蝶が舞うように可憐。

花を鑑賞することのほかに、球根の肥大を愛でる人も少なくありません。
球根を地上に半分ほど露出させ、大きくなっていく様子を愉しむのです。
僕もこの観賞方法がワリと好き。
オーニソガラムの「ニセカイソウ」などと同様に、アルブカも陽に当たると緑色になる特徴も面白いところだったりするのです(笑)。

アルブカの栽培方法

栽培方法もいたって簡単。
「アルブカ・フミリス」などは常緑で、基本、葉を枯らすことなく、1年中生長しています。
その他、多数のアルブカは、初夏に葉を落とし休眠
秋にまた葉をのぞかせて、一気に成長していきます。

このサイクルさえ間違えなければ、休眠して「枯れた!」と焦らなくても大丈夫。
葉が黄色くなっても、落ちてなくなったとしても、慌てず捨てないでください。
心配なら葉が落ちてからしばらくしたって、掘り上げて確認してみましょう。
しっかりと「固さ」があり、ぐちゅぐちゅと腐っていなければ次の年も楽しめるはずです。

アルブカの置き場所

ほとんどのアルブカは、日光が大好き
むしろ日照不足になるとアルブカ独特の葉のねじれが悪くなることもあります。
できれば屋外の良く陽の当たる場所に置くのがベスト

冬は霜に当たると枯れてしまうので、室内の南側の窓辺など、日中、程よく陽の当たる場所においておくと元気に成長します。
5℃以上が目安です。

アルブカの水やり

常緑タイプは腐らない程度に年中、水を与えていても大丈夫です。

休眠するタイプは秋から初夏にかけて土が乾いたら水を与えます。
初夏に葉が黄変しはじめたらみずやりを控え、真夏は断水。
休眠タイプは夏に腐ることが心配なので、僕の場合、掘り上げて、涼しい日陰の場所に保管しています。

とはいえ、アルブカには夏でも根を生やすものも多く、僕は9月ごろから本格的に水やりを開始しています。
一滴の水も与えないシビアな断水でもなく、涼しい軒下の、たまに雨の掛かる場所に置いておいても我が家の場合は大丈夫でした。
そこは各々の環境によるのだと思います。

アルブカの肥料

試行錯誤していますが、僕の場合はIB化成を愛用
効き目が良いのはもちろん。
実はこの肥料、多少量が多くなっても、肥料焼けを起こしにくい

観葉植物・野菜・山野草・鉢花などカバーしている範囲も広いのもうれしい。

忙しいときには肥料を与えることすら億劫ですが、IBならパッと与えてサッと終わる
極論ですが、多肉植物なら多肉植物用、熱帯植物なら観葉植物用など、煩わしく考えなくてもいいのです(笑)。
そんなモノグサでも容量を守れば簡単に使えるので、重宝しているのです。
多肉植物などの小さな鉢に置くと、やたらデカイのがネックですが…(笑)。

で、常緑の場合は3カ月に1回程度。
休眠する場合は、芽が出てきたらまず与え、以降、葉が枯れ落ちるまで3カ月に1回程度、施肥しています[*01]。
できれば溶け残った古いIBは鉢から取り除いておきます。

アルブカの繁殖

アルブカのほとんどは分球によって増えていきます
とくに常緑の場合は良く分球し、植えている鉢を曲げるほど繁茂します(笑)。
なので、鉢底からわっさわっさと根が生え、いかにも窮屈そうなら休眠前の5月~7月ごろに植え替えます。

また、種を播いてふやすことが可能です。
アルブカの種子は8月~10月ごろに播くのがベターですが、比較的、良く発芽します。

ココだけのハナシですが、低温に遭遇すると発芽率がグンとあがるようです。
僕の経験ですが、5~10℃ほどの温度に2週間ほど水を浸して入れておくと、モヤシのように発芽しました。

8月、冷蔵庫で低温処理した「アルブカ・コンコルディアナ」

過去4回ほど、コンコルディアナやナマクエンシスなどの新鮮な種子で挑戦していますが、低温遭遇で発芽するのかもしれません
ちなみに10月現在、我が家の群馬県では程よい気温になっているので、ベランダに出しているだけで、アルブカの発芽しまくっています(笑)。

ベランダの育苗箱に播種しただけの「アルブカ・ナマクエンシス」

100粒以上、芽が出てきているんですけど、どうすんだろ、コレ(笑)。

発芽するしないは、ほんとうに不確実。
発芽率を高めるためにも、新鮮な種子を入手するのがいちばん効率がいいと、つくづく思います。

ちなみに種子から育てた実生の苗は、花が咲くまでに約2~3年掛かるといわれます。
分球したものであれば1~2年で開花するので、やはり分球した球根を育てるのが趣味の範囲なら得策かもしれません。

なぜいま、アルブカなのか。
ケープバルブの行方

ここからは、アルブカをはじめとする「ケープバルブ」についての僕の論考。

アルブカだけに留まらない話なのですが、最近は形態の不思議な球根植物が徐々に人気を博しています
いわゆる「ケープバルブ」と呼ばれる植物群たち。
特に葉が捻じれているものの人気は根強く、「クリスパ」「スピラリス」なる名前の球根が高額で取引されていたりします。

ケープバルブの人気が高まる理由を挙げれば、

  • 葉を鑑賞することで長い時間、楽しむことができる
  • 多肉植物にはない大きく派手な花を咲かせるものもあり、魅力的
  • 休眠球根であれば、送料が極めて安い

ことにあると考えています。

葉を鑑賞することで長い時間、楽しむことができる

まず、葉を楽しむというのは、珍奇植物をはじめ、今もなお強いニーズのある嗜好法です。

従来の鉢花は「鉢花」とあるように花を楽しむことがメインです。
花の咲く時期は一過性なのに、花が咲いているときにのみ市場に流通します。
逆に言うと、花がないときのほうが長いのに、その間、手に入らない。
さらには「観賞法」すらもないがしろにされてきたのです。

また、インテリアや貸植木界隈に「観葉植物」というジャンルはありましたが、住空間や商業空間でのスペースの制約によって、それら大きな鉢を置くことができなくなっています

そこで近年、注目されているのが、コンパクトな植物で、且つ葉や幹に独特のフォルムを有するもの
そこに程よくフィットしているのが、「珍奇植物」といわれるジャンルなのだと僕は考えています。

アルブカをはじめとする球根植物も、独特な形の葉を持つものが多く、なおかつ忙しない現代においても、実はローメンテナンス
水やりもさほど頻繁ではありません。

詳しくはこちらの記事にも書いています。
以下のリンクよりご覧ください。

多肉植物にはない大きく派手な花を咲かせるものもあり、魅力的

上記に挙げた記事にも書いていますが、多肉植物にはない大きくて美しい花を咲かせるのも「ケープバルブ」のセールスポイントです。
アルブカの花はそれほど美しいものではありませんが、無数に乱れ咲く様はなんとも可愛らしいもの。

情報技術の発達した昨今は「SNS映え」なる言葉にあるとおり、派手な花、特徴的な花は特に耳目が集まります。
「ケープバルブ」は、自然が作り上げたものとは思えないほど美しく、観賞価値の高い花を咲かせる品種がたくさん。
ゆえに人々の関心をビジュアルで寄せられることだけでも、かなりのポテンシャルを秘めています。

それに案外、簡単に花を咲かせられるのも嬉しい
花は植物を育て上げた結果です。
その成果こそ、自己肯定感の増幅に繋がります

休眠球根であれば、送料が極めて安い

最後に重要なこと。

昨今、運送業界の運賃が上昇し、あらゆる「送料」が値上げしています
園芸業界もご多分に漏れず、口を開けば運賃の話題。
しかも地域や生産者によって、賃料の上げ幅に差が生じ、とにかく不明瞭です。

結果、消費者にその負担が還ることになるのです。
僕もイチ消費者ですので、やっぱり運賃の高い通販会社で植物や日用品は買わなくなりました…。

ところが、「第4種郵便」という苗や種子を郵送するだけに使える送り方があるのです。
2019年10月の値上げでちょっぴり運賃があがりましたが、50グラムまでが73円。
これ、一般的な配送法に比べると、とてつもなく破格です。

送る際にいくつかの制約はあるものの、土を落としても問題のない休眠球根植物の場合は第4種郵便の恩恵にあずかれます
今後、フリマサイトなどで活発な取引がなされることが予想されますが、覚えておいて損はありません。

そんなこんなで、ますます手軽に「アルブカ」のほか、多様な「ケープバルブ」が手に入るようになると僕はみています。
しかも一部では「100種類以上もある」と言われているのです。
コンプリートするのは一般的には不可能に近い(笑)。
とはいえ、少しずつ面白い形態のアルブカが流通していくのだと思います。

また、「フリズルシズル」のように、交配によっても奇抜な品種が現れるかもしれません
今後、注目すべき植物群であることは間違いありません。

  1. IBは月に1回が目安なのですが、ケープバルブはさほど肥料が必要ではないと考え、少なめの更新頻度にしています。 []

この記事を書いた人

mokutaro

植物好きが高じ鉢物業界に飛び込んだアラサー男子。群馬県に移住し、毎日、食べ(られ)ない嗜好性の強い植物とまみれています。 園芸を考えるブログ「ボタニカログ」を運営中。