BRUTUS「珍奇植物」特集の第4段を読んで。あなたに自分なりの植物感はありますか??

BRUTUS、出ました!

BRUTUSを読んで感じたこと

発売日の朝、コンビニで。

2019年7月1日発売。

BRUTUS(ブルータス) 2019年7/15号No.896[新・珍奇植物]

公式サイトにはこんな紹介がなされています。

奇妙な造形と生態で人々を魅了してやまないビザールプランツたち。今号は、一年ぶりの「珍奇植物」特集です。シリーズ第四弾となる今回は、珍奇植物の聖地、メキシコ・オアハカへ! アガベ ティタノタとヘクティア ラナータの故郷を訪ねてきました。さらに、植物界の重鎮・西畠勲造のお宝から、刺激的な珍奇花の数々、光合成を捨てた謎の腐生植物まで、これまで以上にレアで珍奇な植物大集合。

引用元: 新・珍奇植物 — BRUTUS (ブルータス) — ポップカルチャーの総合誌 — マガジンハウス

これは読むしかない!
ということで、前回同様、出勤前にコンビニに立ち寄り、エ●本を買うように勇ましく(?)レジに突き出す
そして、これ見よがしに職場で読み込むという布教活動をさっそく行ってまいりました。

「天下一植物界」こそ、「ビザ―ルプランツ大博覧会」だった

ざっと読んでみて思ったのは、つい先日開催された「天下一植物界」こそが、今号のサブタイトルにある「ビザールプランツ大博覧会」のだったように思います(笑)
会場に足を運んだひとならきっと、「あの人も、この人も、今号に載ってる」と気づくはずです(笑)。
ちなみに天下一植物界で話題となった「シードハンター」のジョセフさんも、前回の珍奇植物特集に登場。

そこで気になって、本棚から歴代のブルータスを引っ張り出し、再読してみました。

すると、天下一植物界でみることのできた植物に、過去のブルータスに掲載された植物のいくつかを見つけることができたのです。

僕は以前、「珍奇植物」とは何かと考えたとき、

「珍奇植物」とは、今後流通させたい植物をどこかの誰かがインパクトのあるカテゴリー名で括ったもの。

(中略)

勘の良い人なら「流通のためのコンセプト」であると気が付いたかもしれません。 あと一歩のところにある、珍奇植物を普及させまいとするストッパーをいま、どこかの誰かが、どうにかこうにか外そうとしているのかもしれません。

引用元: 「珍奇植物・ビザールプランツ(Bizarre Plants)」って何だろう。ほんとうの意味と、僕らがこれからするべきこと。 | ボタニカログ

と、書きました。
それはたぶん間違っていなくて、着実に「珍奇植物」は広まりつつあると感じています。
珍奇植物特集の第1弾にある植物はもう、わりと見慣れてきていて、望めばやっと手が届くような存在になってきたようにも思います。

誰かの意図がどうのこうのという、不正確なことは言っても仕方がありません。
ただし、多くの人が珍奇植物というカテゴリーにおける植物に興味を抱き、酔いしれ、アクションを起こしている…
そのこと自体は事実であり、園芸業界に多大なインパクトを起こしつつあるのです。
それは、歓迎すべきものだと思いませんか。
だって、珍奇植物という概念がなかったら、あんな熱帯植物もこんな多肉植物も世に知られていなかったのかもしれません
だとしたら、園芸ってものすごくつまらないものになっていたかもしれないのですから…。

「珍奇植物栽培マニュアル」が秀逸

さて、ここから特集号の内容について感じたことを述べてまいります。

今回のブルータスに綴じられている「珍奇植物栽培マニュアル」は、大変に面白いです。
表紙には「BIZARRE PLANTS SURVIVAL MANUAL」とあります。
すなわち、珍奇植物を枯らさないための必要最低限の情報を提供するという意味合いで名づけられたのでしょうか…。

内容は「基本編」と「実践編」に分かれており、基本編には水遣りや置き場所などの、最低限知るべき情報が。

実践編には

  • 多肉植物(夏・冬型)
  • ケープバルブ
  • コーデックス
  • グラウンドブロメリア
  • タンクブロメリア
  • エアブロメリア
  • プラティセリウム
  • 着生蘭
  • 熱帯雨林植物

の各項目ごとに栽培方法などの解説がなされています。

読めばなるほど、手探りだった自己流の栽培方法に少し軌道修正が掛かりそう。
と同時に、まだ栽培したことがない植物の項目を読めば、グッと興味が湧いてくる。

僕は昨年のBRUTUS発売時、こんなことを書きました。

そもそも「珍奇植物」の栽培方法を解説したウェブサイトや書籍が少なすぎるのです。 基本的にはエアプランツや観葉植物・多肉植物と同じような栽培方法での管理ができるのですが、初心者が同じ系統の植物を調べだし、どの生育型が適合するかなど、細かいところまで探し出すことができるのでしょうか? できれば、その植物を検索すれば即座に栽培方法がわかるウェブサイト、書籍の充実が望まれます。

引用元: BRUTUS『珍奇植物』特集第3弾を読む!ワイルドな自生地の姿にヨダレ掛け必須だよ。 | ボタニカログ

完全ではありませんが、今回の「珍奇植物栽培マニュアル」は使えそう
ネットの情報はまさに玉石混交。
少しでも信頼できる栽培方法のほうが心の拠り所にはなります(笑)。
僕もプラティセリウム(ビカクシダ)のページは、穴が空くほど読み込んでいます(笑)。

珍奇植物の定義を「中の人」が解説

そういえば。
「珍奇植物栽培マニュアル」の基本編にはとうとう、「珍奇植物」とは何かという定義がなされています。

「一地方でしか発見されない珍しい植物」「どこにでも分布する種であっても、形や生態が珍奇なもの」とは、かつて荒俣宏氏が博物学的花図鑑『花の王国』の第4巻で「珍奇植物」をテーマにした際、冒頭で掲げた選択基準。明確な定義のない「珍奇くくり」の植物を、端的に言えばこうなるというお手本だ。

引用元: BRUTUS(ブルータス) 2019年7/15号No.896[新・珍奇植物]

過去3回のわたって「珍奇植物」なる特集をしているBRUTUS。
実はどの特集号にも、珍奇植物とはなにかといった定義を示した記述がないのです。

で、今号にいたってはじめて荒俣宏さんの「花の王国」の「珍奇植物」巻がお手本だと。

僕は頭の固い人間なので、マニュアルとか基準とか、決められた指標があると随分と気が楽になる性分でして。
結局、自分で導き出した答えは「これから流通させたい植物群」という結論
でも、言われてみればそんなもの、あってないようなもので、各個人が「この植物は珍奇です」といえば、けっこう珍奇になってしまうのでは?と、今の僕は思うのです。

ことほどさように、外国に自生する植物だけが「珍奇植物」ではなく、日本に自生する植物もよほど珍奇なものがある…。
なぜ国内の趣味家は、国産のフォルムや色彩のちょっと変わった植物の珍奇さに声を挙げないのだろう(とくにコンニャクは個人的にかなり珍奇だと思うのですが)…。
と思っていたのですが、今回は「カンアオイ」と「テンナンショウ」が登場
誌面を読めば僕の頭にある、山野草の類の地味さ加減が、斜め上にアップデートされるのです。

これは珍奇で、しかもカッコイイ!!
と…。

まとめ

「珍奇植物」について思うこと

結局のところ、珍奇植物って何だろうと未だに考えています
こんな感じで歴史を積み重ね、こんな感じで今に至るのだろう…という、あやふやな僕の思うカタチはこちらにも記しています。

が、最近はインターネットの普及によって、所持する植物を介した自己顕示欲がひとつのポイントなのかとも思ったりしています。

世の中には本当に植物が好きな人もいるだろうし、単に植物のあるライフスタイルに憧れている人もいるだろうし。
僕はどちらでも構わないと思う一方、どこまでいっても「自分なりの植物感」を持った人が最後まで植物と向き合うのだろうと思うのです。

「自分なりの植物感」とは

「自分なりの植物感」とは、特定の植物を深く愛好していたり、植物の好きなポイントが独特でそれらに共通するものばかりを集めていたりする感性のことを言います。
植物感の持つ人は、好きな植物の見方が明確で愛好する植物に共通性があるのです。
園芸業界で働きはじめた僕は、その道のプロや愛好家に話を聞くたびに、とんでもなく巨大で未知なる「植物感」に出会うことがあります。
そこには長い年月を掛けて注ぎ込んだ情熱と多くの失敗があり、園芸歴10年そこそこの僕には遠く足元にも及びません。

そんな僕でさえも、それなりの「植物感」はあるつもりです。
そして「珍奇植物」のカテゴリーの中においても「植物感」を見つけ出せるポイントは数多くあるうえに、どんどん手軽に気になる植物を集められるようになってきています

だからこそ。
BRUTUSを片手に気になる植物はとりあえずチェックし、自分の手の届く範囲でいいから情報を洗い出し、ぜひとも育ててみてはどうでしょう
その逆で、気になるからと短期間で大量に手を出すのもお勧めしません。
自分のペースでゆっくりと「珍奇植物」の「珍奇」さに触れていけば良いのです。

それこそが「自分なりの植物感」をつかむ、第一歩ではないでしょうか。

こんなひとに読んでほしい、珍奇植物特集

ということで、号を重ねるごとに珍奇さ加減が上昇するBRUTUS。
男性誌ゆえに深すぎるマニアックさに読んでいて息切れを起こすこともありますが、今回は「変な植物」で人気のランなども紹介されています。
深すぎるところもあれば、平易でスタンダードな一面もあり。

ぜひぜひ、「珍奇植物」が気になる人、好きな人はぜひBRUTUSを一読してみてはいかがでしょうか
また、これからの園芸はどこに行くのか、考えなければならない立場の人は必読です。
昭和の園芸植物で湿気てしまった脳内のアップデートを、是非ともしていただきたい。

「都市(アーバン)園芸」なる造語に思い至る

今号のBRUTUSにあった一文から「都市(アーバン)園芸」なる言葉を思いついてしまいました
はじめはこの記事に長々と記していましたが、あまりにも長くなったので分割しました。

ぜひ当記事と併せて、こちらもご覧ください。

この記事を書いた人

mokutaro

植物好きが高じ鉢物業界に飛び込んだアラサー男子。群馬県に移住し、毎日、食べ(られ)ない嗜好性の強い植物とまみれています。 園芸を考えるブログ「ボタニカログ」を運営中。