ますます都市(アーバン)化する園芸。植物を育てる場所が減る理由

植物を育てる場所がないということ

ベランダ栽培が前提と言う意味

僕がBRUTUSの珍奇植物特集第4段を読んでいて刺激を受けたのは、なんてことはないような次の一文。

世界の果てからやってきて、ユニークな姿と生態で人々を魅了する珍奇植物。それをマンションのベランダなどで育てるコツを、その道のプロに尋ねた虎の巻。

引用元: BRUTUS(ブルータス) 2019年7/15号No.896[新・珍奇植物]

これは第4段の付録についていた「珍奇植物栽培マニュアル」の冒頭にあるもの。
さらっと読んでしまえばそれまでなのですが、よく読むと次のようにも受け止められます。

珍奇植物を育てる層はマンションのベランダで栽培すると想定している

と…。
庭でも畑でもない。
マンションのベランダ限定…。
僕はこの一文を読んだ瞬間、あらゆる事柄が1本の線につながったのです。

現代の日本ではことごとく、若者が都市部へと流入し、地方の過疎化が深刻となっています。
ゆえに都市部での人口密度は増加し、住環境は狭小化。
植物の栽培面積も自ずと小さくなる
結果として、上記のようにベランダなど、限られたスペースでの栽培が基本となってくるのです。

ブルータスの編集長の西田さんは、

雑誌「BRUTUS」は1980年創刊です。76年創刊のPOPEYEがあって、もう少し大人な本を作ろうと思った編集者たちが作った雑誌です。発売日は1日、15日で、読者は33~34歳がコアで、男性70%、女性30%。です

引用元: 東京編集キュレーターズ : BRUTUSが陳腐化しない理由とは? 西田編集長に聞いてみた

と語っています。

33~34歳といえば働き盛りで、やっと自由に使えるお金が増えてくる年代。
とはいえ、将来の不安から消費することに消極的でもあり…。
自宅の庭や畑に空間的な余裕があるような中高年層とも違い、植物を買うのであれば、小さくても価値の高いものを選ぶ傾向があるように思います。

実はここが、ジェネレーションギャップの大きな壁で、中高年層に理解されない部分でもあるのです。

地方の過疎化により、アーバン園芸に集約されていく

以前もこのブログに書きましたが、都市だろうが地方だろうが、植物を栽培できる環境が減少しています。
詳しくは下記リンクよりご覧ください。

今後、少子高齢化や人手不足の影響で、適切な医療や育児・介護の福祉サービス、教育・買い物などのあらゆる生活環境は輪を掛けて悪化すると僕は考えています。
その結果、ある程度の利便性を確保するために、生産年齢人口をはじめとするさらに多くの人が、地方でも市町村の中核部に移るのだろう、と。
つまり、「買い物がしづらい地方では暮らせない」とか「小児科のある都市部へ移ろう」とか、少しでも栄えている場所にばかり、人が集まってしまうのです。

現在の総務省家計調査での「園芸商品」の購入は、上位が地方の県庁所在地を占めています
これには恐らく、植物を栽培可能な空間が広くあるということを証明しているのだと僕は思います。
つまり、庭が広い、家が広い。
ところがそんな地方に住まうのは多くが高齢世帯で、若者はこぞって都市部へ流入するという紛れもない事実がそこにはあるのです。
そしてますます都市部では人口が集中し、植物を購入・栽培できる空間的余裕に制約が起こる。

もしもいまの園芸業界を支えている60歳以上の人口が、園芸に支出をすることを控え始めたら、低成長どころか衰退するに決まっています
というより、人口減少社会の波に抗うのには、消費を糧とする業界にとって、すさまじく厳しい。
シニア世代へ向けて植物を売ることも大切ではあると思いますが、だからこそ若年層へ少しでも園芸への理解を深めないと、この国の、この業界で生き残れない
あまり誰もいいませんが、僕はこのことを声を大にして言いたいのです。

で、本題。
都市部でも如何に無理なく、娯楽性を伴った園芸を楽しめるのか…。
限られた空間の中で、どれだけの栽培パフォーマンスを発揮できるのか
僕はここに大きな「生長点」を感じざるを得ません。
そのひとつが今回の「珍奇植物」であり、小さなスペースでも思う存分、娯楽性の強い園芸を楽しめること。
僕はこれを「アーバン(都市)園芸」と呼んでいきたいと思います。

商品の「陳腐化」は加速度的に速まる。その理由は…

そんな「アーバン園芸」の特徴はやはり、一品入魂
それぞれの感性で選び出された数少ない植物を身近に置き、日々のメンテナンスを楽しむ。
そしてそんな大切な植物とともに成長し、彼らの微妙な変化に心を躍らせるのです。

とはいっても、他の植物も気になりだすのは仕方のないこと。
「アーバン園芸」に励もうとするとき、新しく植物を迎えるにはスペースに限りがあります
そんな問題を解決するのが「メルカリ」などのフリマアプリ、または「ヤフオク」などのオークションサイト
不要になった、あるいは増えてしまった植物を消費者が手軽に売買する。
現にメルカリなどのアプリを使うと、植物の売買は大いに盛んです。
この世界を知らなかった僕は文字通りの目からウロコ。
こちらも詳しく別記事で書いていますので、ご覧ください…。

今後はこれらのサービスを使った取引が通常化し、購入から販売まで、消費者がその流通過程に加わるとみるべきです。

となると、さらに進むのが「陳腐化」という現象
昨年に流行した植物も、次の年に売れるとは限りません。
なぜなら、園芸業者が売れば売るほど「消費者が販売する」という新たな流通チャネルが発生するから。
ことほど左様に、トレンドが凄まじい速度で変化するのは仕方がないことだし、現にそうなりつつあるので、止めようがありません。

それらに対応するには、商品へのブランド力を強化したり、次々と新商品を投入するくらいしかないのではないでしょうか。
生産する側は、多くのラインアップを取り揃えるために、並行的に多品種を栽培できる技術と設備が必要だと考えています。
もう、皆が同じ植物を大量に買うことはあまりありません。
逆に同じ植物を栽培し続けるのなら、フリマアプリを使用しない層へ意識を振り向けるしかない…。
でも、それをやればやるほど年を追うごとにシェアが減るので、いずれ消費が先細り、身動きが取れなくなるのは明白。
さらに周辺諸国が機械やAIを導入し始めているこのときに、大量に、高品質で低価格な商品が輸入されたら?
日本の生産者はマニアでニッチな商品を生産する層を除いて、駆逐されると僕は思います。

まずはフリマアプリを覗いてみよう

業界の方々へ。
どちらにしろ、誰しもが1年に1歳、年をとります。
いつまでもシニア層にばかり目を向けていては尻すぼみになるだけ。
「珍奇植物」の類が未来に残る植物ジャンルかは分かりません。
が、少なくともいま現在、最先端のラインアップであるBRUTUSの珍奇植物特集を参考書ごとく読み込む
ここに掲載されている植物はなぜ、注目されているのか。
注意深く探るのもひとつの手です。

そのあとにぜひ、スマホにSNSやメルカリなどのアプリを入れてはみませんか?
いろいろと感じることができ、学ぶことも多いです。

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この記事を書いた人

mokutaro

植物好きが高じ鉢物業界に飛び込んだアラサー男子。群馬県に移住し、毎日、食べ(られ)ない嗜好性の強い植物とまみれています。 園芸を考えるブログ「ボタニカログ」を運営中。

『趣味の園芸』6月号に載ってます

『趣味の園芸』2020年6月号の「ディーププランツ入門」のコーナーに取り上げていただきました!

趣味の園芸でアドロミスクス!?

ベンケイソウ科多肉植物の一種である「アドロミスクス」は僕が園芸にのめり込むことになったキッカケの植物。
その当時起こったこと、改めて考えたことなどをまとめてみました。