合本になって改めて読み返す…。
濃い、濃すぎる…!!
深い、深すぎる…!!!!
BRUTUSの「珍奇植物」シリーズが合本で発売!
これまで僕が感じていた「珍奇植物」のコト
これまで僕は、珍奇植物とは何かということを、このブログ上でも考えていました。
ハイクラスな植物であるとか、
そうではなくて、これから流通する植物であるとか…。
しばらく時間をおいて「珍奇植物」を考えれば「流通」とか「栽培法」だけでなく、今後は植物と暮らすための「デザイン」や「ライフスタイル」にも園芸業界は真剣に取り組んでいかなければいけないのだと感じるようになりました。
これについては以前、長ったらしく書きましたが、このBRUTUSを読んでだいぶ植物の見方が変わったのです。
『合本 珍奇植物/総まとめ』の内容は?
さて、本題の『合本 珍奇植物/総まとめ』です。
中身はこれまで発売された第1弾と第2弾の珍奇植物特集を混ぜ合わせたもので、変わりありません。
いうなれば、読みやすいようにページの順序を並べ替えたような構成です。
ファッションやアート、建築にも勝るとも劣らない脅威的な造形美を有する植物たち。そんな中でも特にビザール(風変わり)な植物ばかりを集めた、『珍奇植物』シリーズ、2冊を1冊にまとめました。
植物愛好家たちから熱い眼差しを受ける人気植物を集めた図鑑「コレ、欲しい」では新規ページも加えて、26カテゴリー89種を紹介。珍奇植物の知られざる自生地の姿を見るべく遠路はるばる南アフリカへ。各国から人気種が集まり育成されている”世界の植物交差点”、タイの植物マーケットでは園芸業界の注目株をチェック。園芸先端国ドイツでは日本でも人気の高い伝説的なナーサリーや研究者、そしてドイツの植物愛好家の家も訪問。ディッキア界のレジェンドサイト「ディッキア・ブラジル」も取材してきました。
ほかにもたった1人でジャポニカ学習帳の表紙を撮り続けている写真家に迫ったインタビュー、古くから日本人は珍奇植物好きだったことを裏付ける「江戸の珍奇趣味」、日本の植物好きの家を訪ねた「植物のある家」など、盛りだくさん。
植物が好きになったものの何を買ってよいかわからない人、自分らしいこだわりの一鉢を探したい人、もっとマニアックに植物と触れあっていきたい人にはぜひ手にとってもらいたい、いま一番モードな園芸ガイドブックです。ほかではなかなかお目にかかれない、レアで面白い植物が揃っています。
引用元: BRUTUS特別編集 合本・珍奇植物 | マガジンハウス 編 | マガジンハウスの本
なので珍奇植物シリーズのBRUTUSをまだ読んでいない、あるいは友人から借りた、コンビニで立ち読みした、夢の中で中身を神から告げられた…という人は間違いなく買うべき。
もっとも、植物を趣味をしている人でないほうが刺激に満ち満ちて読み進めることができるのではないでしょうか。
そもそも「珍奇植物」って何??
テーマとして「珍奇植物・BIZARRE PLANTS」とありますが、どんな植物なのかを一言で表すのなら、いま流行し始めている植物です。
インターネットなどの普及が進み、これまで一部の栽培家だけがこっそりと愉しんでいた植物の栽培法が知れ渡りました。
そして世界中から奇妙なフォルムや色彩・性質を持った株が輸入されています。
それらを紹介する動きは2010年代より活発化し、ついに「珍奇植物」として日の目を見たのが2015年9月に発売されたBRUTUSなのです[*01]。
ところが、ここに紹介されている植物は詳細な栽培方法が確立されていない種類も多いうえ、資料も少ないのが現実。
初心者向けではありません。
ただし、施設園芸用の光源の発達や、保温・加温装置の家庭用品が徐々に普及していることなどから、栽培がすこぶる困難…ではなくなってきたように思います。
そういったことも、今まではあまり流通していなかった植物へ耳目を集めるきっかけになっているのでしょう。
この本に紹介されていないものにも「珍奇植物」はある!
そんな流通し始めている植物のホンノ一部を紹介しているのがこの「珍奇植物」特集なのです。
とはいっても、趣味家がニタニタと笑みを浮かべながら育てている珍奇オブ珍奇な植物はまだまだ沢山あるはず。
たとえば紹介されている「パキポディウム」は、種類によってだいぶ違うフォルムを魅せるし、「ハオルシア」のページは珍奇どころかオーソドックス過ぎる。
もっと天地がひっくり返るくらい衝撃的な植物は探せば結構出てきます。
ざっと読み返してみれば、メロンのいちばん甘いところをスプーンですくう、あるいはイチゴの先端部分の美味しいところだけを食べている読後感。
読んで満足なのですが、ハイクラスな「美品」や「珍品」を集めすぎていて、どこか寂しさが残るのは僕だけではないはずです。
もう少しグレードを落としたところで、この頃流通量が増えている「ドリミオプシス・マクラータ(Drimiopsis maculata)」なんかも面白いし、なにも南アフリカや南米の植物だけでなく、アサガオや盆栽界隈の植物もカテゴライズしても面白かったのでは?と思うのです[*02]。
ですが、掲載できるページ数には限りがあるし、ここまで広く、しかも凝縮されたマニアックな植物を紹介している書籍はこの本意外、見たことがありません。
掲載されている植物はイラストではなく、写真であることもポイントです。
ただえさえ見た目が珍奇なのに、美しく撮影されているのでついつい惚れ惚れしてしまいます。
金額も1,000円もしないので、複数冊購入できます(笑)。
植物に興味を持ち始めているひとにプレゼントをしても間違いなく喜ばれます。
恐るべき「BRUTUS」。あらゆる業界に影響を及ぼしつつある。
そういえば、珍奇植物特集の第2弾は発売当初に購入してはいましたが、このブログに読後の記録をしていませんでした[*03]。
その第2弾の販売期間中に驚いたのはBRUTUSの販路。
各種書店に置かれているのは当たり前。
さらにはコンビニや駅の電車を待つホームの中にある小さな売店にもBRUTUSが置かれているのです。
一般的な園芸雑誌がここまで広くあらゆる売り場に設置されることはまずありません。
ゆえにBRUTUSが園芸カテゴリーを取り上げて、話題にならないほうがおかしい。
このときはじめて、なぜ老若男女・そして業界を問わず「ビザーレブランツ」と騒がれたのか。
その一端を目撃したような気がしたのです…。
いまやインテリア業界でも普通に「珍奇植物」というカテゴリーが認識されつつあるし、あの雑誌が発売されてからホームセンターに並ぶ品種も変わり始めているように思います。
恐るべし、BRUTUSの影響力…。
だからこそ欲しい実用的な情報
今後、この雑誌に掲載されている植物の詳細な栽培方法や自生地での様子、それから同じ科や属にある植物にはどんな種類があるのか…。
そんな栽培するにあたって必要な情報が網羅された書籍が発売されるのが望まれます。
車に乗ったらこんなところに行けるよ!という情報があっても、いざ運転するためには道路標識の種類や意味、道路交通法といった実用的な情報が必要です。
「珍奇植物」にも、もっと実践的な情報が欲しいところです。
「植物と暮らす」のではなく「植物と生きる」
最後に。
ついつい誌面の写真を眺めては感嘆し、手元で栽培する妄想をしてしまう…。
ただし、そんな欲望が各地の乱獲を引き起こしてしまうことも頭の隅に入れておかなければいけません。
運よくこれらの珍奇植物を手に入れたのなら、投機目的ではなく、自らの手で人生を賭けて栽培するべきです。
このムック本で紹介されているあらゆる植物が現在、高騰している意味も僕らは考えるべきではないのでしょうか。
そして、盛んに各種メディア取り上げられる「植物と暮らす」というテーマ。
もうそんな考え方はハッキリ言って古いです。
如何に植物と長い年月を暮らしてきたのかがカッコいいと思われる時代。
皮製のヴィンテージ品をこれ見よがしに自慢するみたいに、10年以上もの大株を前に苦労を語る…。
これに僕らは憧れるのです。
きっとね。
もはや「植物と生きる」ほうがしっくりくる。
この「珍奇植物」の合本はそのための入門書であるとも言えるのではないでしょうか。
- というふうに僕は認識しています。間違っていたら申し訳ありません [↩]
- 巻末の江戸園芸コーナーにチラッと出ては来ていますが… [↩]
- ちなみに第2弾は春日井のサボテンフェアに行く道中で購入 [↩]