「ショクダイオオコンニャク」ってそもそもどんな植物?おもな特徴を挙げてみました

前回、ショクダイオオコンニャクが神代植物公園で開花し、小田原フラワーガーデンにも似たような植物があると書きました。

今さらながら、行かなかったことをちょっぴり後悔。まぁ、いいか。とはいえ、今回のフィーバーが終わって、あることに気が付きます。

ニュースでたびたび報道されたものの、その植物の「正体」ってあまりよく分かりません。結局、あの植物のために盛り上がったそもそもの理由って、何だったの?と。

そこで今回、いくつかの資料を当たり、調べてみました。

ショクダイオオコンニャクってそもそもどんな植物?

オオコンニャクの概要

サトイモ科コンニャク属。この植物のおもな原産地ははインドネシアのスマトラ島。急傾斜の湿度の高い谷間の地形を好み、山岳地帯が主分布域だそう。

photo credit: thraxil via photopin cc
photo credit: thraxil via photopin cc

学名をAmorphophallus titanumといい、現地では「死体花(Bunga bangkai/ブンカ・バンカイ)」と呼ばれます。そう呼ばれるのは、花が強烈な匂いを放出するから。

「世界一大きな花」って2つない?

以前、ガガイモ科植物の記事でも挙げた「ショクダイオオコンニャク」と「ラフレシア」。ここには「臭い花」という共通点だけではなく、「大きな花」であることも特徴です。

photo credit: vil.sandi via photopin cc
photo credit: vil.sandi via photopin cc

両者ともに「世界一大きな花」と紹介されることがありますが、実は違いがあるそうです。

さまざまな「世界一」を記載するギネス・ブックでは、「世界一大きな花」を咲かせる植物はスマトラオオコンニャク[*01]です。この花の直径は一・五メートルにも達します。

(中略)

ただ、この花は小さな花の集まりを大きな苞で包んだもので、一つの花ではありません。そのため、独立した花としては、ラフレシアの花が「世界一大きな花」とされます。

引用元:植物はすごい – 生き残りをかけたしくみと工夫 (中公新書)

ショクダイオオコンニャクは、厳密に言えば「世界一大きな花」ではない。これは酒の席で使えそうです(笑)。

ショクダイオオコンニャクの生活史

次にその生長サイクル。「地球200周!ふしぎ植物探検記 (PHPサイエンス・ワールド新書)」という写真家・山口進さんの本に、詳しくその生活史が書かれていました。要約すると、

  • 1年目。種子から発芽しても、1枚の葉しかない。草丈30㎝ほどに生長し、地上部は数か月後に枯れる。
  • 2年目。前の年よりも大きな芽が出る。葉は50~60㎝ほどに生長。
  • 3~4年目。葉が巨大化。
  • 6年目。大きな葉はあたかも木のようになり、高さ3m以上にもなる。ここまでの間に地下の球茎は肥大を続ける。
  • 7年目。球根は直径1m、厚みも30~40㎝ほどになる、「花芽(かが)」という花になる芽を出す。その花の芽は2週間で高さが約1m、3週間後にはさらに大きくなり高さ2~3mに。その4~5日後には開花する。

とあります。また、山口さんの別の情報[*02]には、スマトラでは、雨季の3月ごろに花を咲かせることが多いのだそう。

「スマトラオオコンニャク」の葉

ちなみに、小田原の「スマトラオオコンニャク」は1月ごろ、こんな葉が咲いていました[*03]。

DSC_36675

たまたま1月に小田原の株が咲いていたのかもしれません。

DSC_3671

疑問なのですが、日本では葉や花は何月ごろに出ることが多いのでしょうか…。

DSC_6190

オオコンニャクの匂いってどんなもの?

次に、その「花」について。ここはもう、特に書く必要もないほど「くさい!」ということで世に知られています。ただ、夜に開花するということもあって、その香りはなかなか嗅ぐことができません。

地球200周!ふしぎ植物探検記 (PHPサイエンス・ワールド新書)」には、

八時、花の周囲は匂いで満たされた。住民が数人やってきた。一㎞ほど離れた家で匂いを感じたという。

暗闇のなか全員が不快な顔をしながら花を遠巻きにして見ている。彼ら流の表現で匂いを喩えるなら「ネズミの死体が腐るときの匂い」ということらしい。

私自身はノートに「腐った魚と砂糖が焦げる匂い」と記録した。

(中略)

匂いを経験してから数年たつが、今でもこのときの匂いは脳のどこかに染みついている。

引用元:地球200周!ふしぎ植物探検記 (PHPサイエンス・ワールド新書)

ともあります。しかも、驚くことに花が発熱し、湯気を蒸発させ、匂いの成分を「肉穂」という煙突で遠くまでばら撒くのだとか。

そんな言葉では言い表せない「死体臭」やら「腐敗臭」やらが、夕飯時に家まで届く…。確かに地元民にはたまったものじゃない。

https---www.pakutaso.com-assets_c-2015-06-DI_IMG_5648-thumb-1000xauto-17815

ゆえに、生育地での個体数が増えない理由にひとつに、その匂いや不気味な姿が忌み嫌われ、見つけ次第、切り倒されてしまうそう[*04]。強烈な腐敗臭を発するのは、ハエの仲間を呼び寄せる必要があるため。仕方がないと言えば、それまでなのですが…。

痛快なる、清順さんの比喩

最後に、清順さんの「そらみみ植物園」に、今回の「ショクダイオオコンニャクフィーバー」を予見するような一文が…。

自然界ではその悪臭でもって虫を集め花粉を媒介し受粉する。特に糞虫などに人気だそうだ。

ちなみに人間様もこの珍奇な生殖器をもった花が大好きなようで、世界のどこかの植物園などで咲くと、必ずや大きなニュースになり、その花をひと目見ようと行列ができ、まるで糞虫のように集(たか)る習性がある。

引用元:そらみみ植物園

まさしく、ごもっとも。

僕は花にタカるハエになりたい…。

別に匂いを嗅ぎつけて飛んで行ってはありません。が、確かに僕らは、「ほら~!みんなぁ~、この花クサイよ!あと数時間で枯れるから、早くおいでよ!」と、匂いで誘われているのは間違いありません。

次はいつになるかは分かりませんが、飛び交う情報の中に、その「匂い」が漂ってきたのなら、是非ともクサイ花へとタカりたいものです。

  1. 当ブログ注記:別名ショクダイオオコンニャクとこの本に記載あり []
  2. 生き物たちの驚きの能力に迫る (2) 「世界最大」で「世界一臭い」花を追い求めて20年! – 写真家 山口進氏 | マイナビニュース []
  3. 今回観に行った2015年7月には地上部は枯れて、鉢だけしかない状態でした []
  4. 匂いを嗅いだこともない、花も見ていない僕には到底わかりませんが、確かに一日中腐った魚が傍になったら耐えかねます。住民の気持ちも、分からないでもないなぁ… []

この記事を書いた人

mokutaro

植物好きが高じ鉢物業界に飛び込んだアラサー男子。群馬県に移住し、毎日、食べ(られ)ない嗜好性の強い植物とまみれています。 園芸を考えるブログ「ボタニカログ」を運営中。