別冊Lightningのムック『GREEN INTERIOR』を読んで。そもそも室内で植物は育たないってのが僕の持論。

10年前に比べると、ホント変わった!としか、言えません。

インドアグリーンのムック本『GREEN INTERIOR』を読みました

学生時代、インテリアをカジッていました…(;’∀’)

実はボク、学生時代はインテリアを学んでいて、そのきかっけはインドアグリーン[*01]。ショールームへ見学に行っても、なぜか室内装飾よりもインドアグリーンに注目するという変わった学生でした[*02]。

そんな僕の前に先日、こんなムック本が現れました。その名も「GREEN INTERIOR」

別冊Lightning vol.154 GREEN INTERIOR(グリーン・インテリア) (エイムック 3427 別冊Lightning vol. 154)

眩しいタイトルです。タイトルから連想されるカテゴリーが広すぎてどんな本なのか非常に気なる!ということで注文。家に到着後、ワクワクしながらパラパラ読む…。

本を読んだ感想は…

大まかな感想を先に書くのなら

  • 約80パーセントは多肉植物を紹介
  • どちらかと言えば男前インテリア
  • あら?この前にも読んだ記憶が…
  • それでも、僕の持論は「部屋で植物は育たない」

という4点。ひとつひとつ、記録していこうと思います。

約80パーセントは多肉植物を紹介

紹介される主要な植物は「コーデックス」

このムック本。紹介されている植物のほとんどが多肉植物です。そして、その核となるのが「コーデックス」と部類される植物です。

さて、コーデックスとは何でしょう。

コーデックスとは、植物の茎やシダ植物の軸(枝)のことですが、多肉植物では茎や枝、ときには根が大きく肥大する植物をコーデックスと呼んでいて、鋭いトゲを持つものなど、種類や形もさまざま。

(中略)

多肉植物愛好家の間では「芋」や「ほね」と通称されます。

引用元:はじめての多肉植物 育て方&楽しみ方 (基礎の基礎からよくわかる)

上記引用の通り、身体の一部分が肥大した植物をコーデックスと呼んでいるそうです。[*03]。

いま「コーデックス」が注目されています

現在、多肉植物界隈だけでなく、室内園芸植物の業界では俄かに「コーデックス」が注目されています

ユニークなフォルムに心を惹かれてしまう感性の豊かな方が、SNSなど、あらゆる場面でコーデックスの面白さを発信しているのも人気の秘密。

五反田TOCで開かれた「即売会」グランカクタスさんのブース
五反田TOCで開かれた「即売会」グランカクタスさんのブース

ところが現在、「カッコいい!このコーデックス欲しい!」と思っても、ビックリするくらいの高値で取引されていたり、そもそも入荷することが難しい状態にあるのだとか。

このムック本にはそんなコーデックスがわりと多く取り上げられていて、ブルジョア感が満載(笑)。憧れてしまいます。

他にも、サボテンやエアープランツ、シダ植物・熱帯植物などが取り上げられていますが、メインはやっぱり多肉植物です。いま、どれだけ多肉植物が人気なのか…。その側面を図らずも、うかがい知ることができる構成でもあります…(笑)。

そうです。冒頭に書いた「10年前とは変わった」とは、インテリアグリーンとして扱われる植物が大きく変わっているのだなぁと感じざるを得ません…。

どちらかと言えば「男前インテリア」

そもそも「男前インテリア」って何?

このムック本、重要なのは、紹介されている部屋のオーナーの全員が男性ということ。女性は1人として登場しません。この本の編集元が「ライトニング」という男性向けファッション誌ということもあるのですが、いま話題の「男前インテリア」目線であるのは否めません

「男前インテリア」とは、渋めでずっしりとした思いテイストのコーディネートにあてがわれる総称のようです。それがいま、インドアグリーンにも影響を及ぼし、植木鉢も「男前インテリア」の要素のひとつとされているようです。もちろん、どんな植物を選ぶのかも重要です。

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特徴としては、植物はコーデックスをはじめ、大きなサボテン、ビカクシダなどのシダ植物、さらには熱帯植物など…。植木鉢は、白・黒・透明、はたまたシックな色合いをもった陶磁器をはじめとする素材で造られたものが人気です。

「モンステラ柄ブーム」による僕の私見

ここからは僕の私見による仮説です。多肉植物がここまで大きな流行になった数年前、まだまだインテリアグリーンで扱われる植物はパキラやモンステラなど、熱帯の植物が主流でした。

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インテリアグリーンに熱帯植物が取り入れられる意味は、植物も室内空間における調度品の構成材料となり得るからだと僕は認識していました。つまり、部屋のどこかに植物を置くことによって、空間の印象をガラリと変えてしまうことができると…。

例えば、10年ほど前にあった「モンステラブーム」。あれは、モンステラの大きな葉が空間の「フォーカルポイント(視線の行き着く先、集まる場所)」を作り出すことが容易だったからこそ、流行ったのではないかと考えています。

photo credit: DSCN0340 via photopin (license)
photo credit: DSCN0340 via photopin (license)

さらに言えば、モンステラの独特な葉の形状が、「緑=癒し」という流れの中で注目され、モンステラ柄のパターンを施したインテリアエレメントが多く生み出されました。その結果、部屋の中に「緑の癒し」をリアルにも疑似的にも作って、都会の無機質な空間に強引にでも「自然の優しさ」を取り入れようとしたのではないでしょうか[*04]。

フォーカルポイントを構築するには「大きさ」が重要

また、フォーカルポイントを作り出すということにおいて、植物の「大きさ」は重要で、あまりに小さすぎると目につきません。インテリアグリーンとして小さすぎると、室内を演出する調度品としての役割を果たさなくなるのです。

そんなとき、流行してきた「多肉植物」。ちょうど、この移り変わりのときに某ホテルへ見学へ行きました。そのとき、エレベーターホールの片隅にそっと置かれていたのは、多肉植物の寄せ植え。小さな植物の集合体を使って、どうにか植物の存在をアピールしようとしているのが伝わりました。

さらに、サンスベリアのスタッキーやアガベなどをバルコニーに配して、窓辺からそっと顔をのぞかせる無骨な姿がいまでも印象に残っています。

人気の植物は「大きさ」の弱点を克服しようとしている?

そしていま、その「大きさ」を克服すべく、奇妙な形状をしたコーデックスや、長く巨大化したサボテンなどが注目されています。これは多肉植物を部屋に取り入れても、フォーカルポイントとして利用できると理解されてきているのではないでしょうか。要するに、肥大化する幹の部分と、季節によって生えてくる葉によって、多肉植物全般の弱点である「大きさ」を克服しようとしているのでは…とみています。

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そして不足する大きさを補うように、スタイリッシュで若干大きめの鉢が導入され、「男前インテリア」としての調和が試されている…。ここまでが僕の、インドアグリーン×多肉植物界に起こっているブームの仮説です。

あくまで仮説です。異見のある方は、勉強不足の僕にコメント欄、もしくはお問い合わせフォームへご教示願います。

あら?この前にも読んだ記憶が…

「観葉植物超入門」にニュアンスが似ている

というか。このムック本によく似た本を、以前このブログでも紹介しました。

よくよく考えたら、同じ出版社で、ゆえに登場人物も構成も似ています(笑)。

ただ、決定的に違うところは、そのマニアック感。「GREEN INTERIOR」のほうが、よく取材されているし、読み応えがあります。

凄まじい取材力。だから読み応えアリ

そもそも、ここまで植物好きな人を探し出して、取材して、紹介して…。ライトニングという雑誌を購読していないので分からないのですが、なにかインドアグリーンの連載でもしていたのでしょうか。

この本を一言で表すのなら、如何に格好良く植物を演出できるかに焦点が当てられています。どんな鉢に植えられ、どのようにして植物が置かれているのかが、よくわかります。さらには、その植物の周囲ではどのようにインテリアが構成されているのかを写真から読み取れるので、「こういったレイアウトをマネしよう」と勉強される方も多いのでは。

また、中盤にある植物紹介のコーナー。いま、特に人気が高く、さらには超絶レアな植物をピックアップしているこのページはかなり参考になります。「珍奇植物」的な要素が入っていますが、それでもカシワバゴムの木など、この頃見直されてきている植物も紹介され、多肉植物系により過ぎないチョイスは好感が持てました。

それでも、僕の持論は「部屋で植物は育たない」

以前にも書いた僕の持論

ここまで来て、僕からひとつ言いたいことがあります。

先に挙げた「観葉植物超入門」の記事でも書きましたが、基本、植物は室内では育たないというのが、僕の持論です。

以前の記事の繰り返しになりますが、

半日陰・あるいは日陰で育つ植物は多くありますが、流通している植物の中ではほんの一部です。多くの植物は、室内の日光だけでは十分に育ちませんし、風に吹かれていた方が健康的に育つ植物も多くあります。

植物の初心者ブログをみると、とんでもないほど徒長した植物をたまに目撃します。それってインテリアグリーンブームの功罪ですよね、どう考えても。

だから僕はココではっきり言いたい。基本的に多肉植物やサボテンは室内だけでは育ちません。長く楽しむのであれば、生長期にはできるだけ外に出してあげてください。

引用元: 『暮らしが変わる!観葉植物超入門』を読んで…。確かに植物は暮らしを変えます。変えますケド…。 | ボタニカログ

ということをまずは記しておきます。

普段は室内で栽培していないんでしょ?

この雑誌に登場している植物のほとんどは、健康的な姿をしていますが、恐らく室内だけで栽培している植物は皆無でしょう。きっと、雑誌の取材が来る!というのでそのときだけ植物をセッティングし撮影しているのでは?と…。

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よ~く本の写真を見てください。普段、動かしづらい重い鉢は窓際にあるのですが、手でも移動が可能な大きさの多肉植物は、キッチンのカウンターや、階段の踏み板部分、はたまた棚の上などに置いてあるのです。

これってどういうことかというと、常時室内で植物を栽培しているワケではないということ。さすがに重量のある鉢をことあるごとに移動するのは大変ですので、そういった鉢がまず、日当たりの良い場所に置いてあります。

だって受け皿を敷いてないじゃん。

さらにポイントは、部屋紹介で登場する多肉植物には受け皿が設置されていません。常時室内で管理する場合、水やりも室内で行うわけで、このときに鉢の下に受け皿を敷いておかないと、当然、水が溢れ出てきます。もっとも、溢れ出ないように水をあげることは植物にとって不健康だし、そもそも排水性の良い土を使っている点で漏れやすい、というのもあります。

こういったことから、水やりをするときなどはきっと、充分に水を与えられる屋外に植物を置いているはずです。多肉植物など、植物を常時管理している場所が、室内ではないどこか別の場所にあるのです。

健康的に植物を栽培するには、しっかりと日に当てることが大切

さらに、ネチネチして気持ち悪がられるので書くことを躊躇いましたが、興に乗ってきたので書きます(笑)。

この本には、カーペットに鉢を置いている写真がありましたが、そのカーペットに「シワ」がないのです。いつも置いてあるのなら、その部分だけ変色したように見えるのですが…。また、フローリングや木製の家具の上では砂が落ちていたり、水やりによるシミができていたり、変色・退色する場合が多い。ところが、これが見られた場所は、窓際の、恐らく常時植物がセッティングされている定位置くらいだったのです。

以上のことから、雑誌で紹介されているように、健康的に植物を栽培するには、しっかりと日に当てることが大切なのです[*05]。そして、鉢底から水があふれるようにして与え、かつ風通しの良い場所に置いておくことが望ましい!

インテリアグリーンを扱うメディアの功罪

古今東西、こういったインテリアグリーンを扱うメディアの功罪は「室内でも植物は育てられるんだ」という誤解を招いたことにあると思うのです。そもそも室内で植物を育てられるのなら、貸植木などの業者は必要ありません。彼らは室内に設置した植物を一旦引き取り、温室などで再生してからまた施設へと運び出すのです。

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僕らも貸植木業者にならって、ベランダで栽培するなり、窓際の明るい場所に置くなり、植物の健康状態を見極めた上で管理するべきだと思うのです。中には、それほど日光を必要としない植物もありますが、それでも多少の光がなければ、形が崩れ、やがては枯れるはず。

インドアグリーン関係の本を読んで参考とされる方。ひとまず、基本的に室内で植物は育たないということを頭に入れておいて欲しいのです…。

現代のインテリアグリーンをもっと深く!

10年前とは様変わりしたからこそ

あとは、インドアグリーンとして取り扱われる植物の種類も豊富になってきています。この本にあった特集のような、いまインテリア業界で利用される植物を改めて、深くピックアップするのも面白いのではないでしょうか。

また、インテリアのスタイルについても、かなり変わってきていて、もはやナチュラルテイストが主軸となっているような気がします…。そこに、カジュアルだのポップだのヴィンテージだのといったテイストが付随しているように思うのです。

なので、その部分が更新されているような本があったら、きっと需要はあるかと…。

植物の特徴、栽培方法、管理方法を室内園芸に特化したうえで、植物をどのように演出するべきか。また、流行の植物をピックアップすれば多分、売れる。ただし、置き場所や管理方法は正直に書くべし。ファッションセンスだけでは植物は育ちませんから。

  1. 詳しくは僕のプロフィールをご覧ください []
  2. そのため、インテリアグリーンに関して押さえられない情動があるのです []
  3. この「コーデックスの定義」には非常に興味があります。いつか掘り下げて調べてみたい… []
  4. 詳しいコンセプトを調べていないので、ちょっと深読みしすぎかな?という面はありますが、大まかにそんなところじゃないのかなぁ?とも思います []
  5. 日に当てるといっても直射日光をガンガンに当てろということではなく、その植物への必要量を確保してあげるべきだということです []

この記事を書いた人

mokutaro

植物好きが高じ鉢物業界に飛び込んだアラサー男子。群馬県に移住し、毎日、食べ(られ)ない嗜好性の強い植物とまみれています。 園芸を考えるブログ「ボタニカログ」を運営中。