【コロナの時間】やっぱり3つの余裕は重要だったと気づいた件

重要なのは3つの余裕

コロナ前から考えていたことが、このコロナ禍の中で明確になったと僕は感じています。
それは、「園芸」という趣味において足りなかったもの。
植物を育てる「場所」「時間」「経済」の3つの余裕がやっぱり必要だということ。
特に「時間」の要素は重大であると感じました。

コロナ禍では「自粛期間」という言葉とともに、仕事がリモートワークなどへと移り、外出する必要性が格段に減りました。
家に滞在する時間が長くなるがゆえに、いわゆる「おうち時間」をつかって生活に彩を加えられる趣味が受け入れられてくる。
居住空間の周辺部が行動範囲となるので、ホームセンターなどでは、インテリア・ガーデニング・ペット・DIYなどの部門で売れ行きが好調とも言われています。

HC業界は、2019年10月に施行された消費増税に伴い、客単価の大きいリフォーム工事需要などの反動減に直面していた。しかし、新型コロナの感染拡大を機に、郊外を中心に広大な駐車場を持つ大型店が多いHC業態は、ソーシャルディスタンスを保ちやすい買い物空間として注目を浴びた。  

加えて、もともとの強みであった品揃えの良さと安価な値段を背景に、マスクやアルコール除菌商材など新型コロナ対策商品をHCに求める消費者が増加。緊急事態宣言が解除された5月以降はアクリル板やビニールシートなどの感染防止資材に加え、外出自粛によりガーデニングなどの需要も高まり、DIY資材などHC業態が得意とする商品の販売が一段と伸長した。  

総じて、新型コロナ外出自粛や在宅勤務の広がりが各社にとって思わぬ追い風となり、各社好業績となった。

引用元: ホームセンターの多くが増収増益、DIYや園芸用品を中心に巣ごもり需要を取り込み販売好調|@DIME アットダイム

僕はこの流れをみて、こう考えています。
着眼すべきは、居住空間に滞在する時間が長くなったことにより、ひとびとが生活の質を高めようとしている、ということ。
つまり、人々が積極的に「手間」を受け入れようとしているということです。
ガーデニング部門に置き換えてみれば、植物を「育てる」という行為に重きが置かれていること。
収穫ができる野菜や、長期間美しい観賞状態を保ったことができる植物がいま、選ばれているのです。
なぜなら、時間に余裕があるから

園芸という趣味において3つの余裕のひとつでも充足すれば、プラスになるのだと分かりました。
とくに時間の余裕は絶大な効果があるのだとも。

そのうえで、植物を幅広く選べるカスタマイズ性が今後は必要
高グレードな商品も少しずつ提案してみるのも大切だと僕は思います。

植物を育てていなくても生きていけられる

つい先日、こんなアンケートがありました。
大手種苗会社が行った「2020年度 野菜と家庭菜園に関する調査」というもの。
このなかには、コロナ禍で植物との接し方が変化したのかなど、興味深い項目がいくつも掲載されています。

そのなかで僕が驚いたのは、家庭菜園で野菜を作ったことがあるか?という項目。
「家庭菜園の経験がある」と答えたのは全体の50パーセントで、「家庭菜園の経験がない」と答えたのは49.7%
約半数のひとが「家庭菜園」をしたことがないのです。
逆に言えば、「家庭菜園」をしなくも不自由はない。
する必要もないということの裏返しでもあります。

さらに驚愕したのは、「家庭菜園で花を育てたことがない人」というのは、57.8%
野菜よりも花の需要が低い
そう、生活の中に花がなくても生きていけるのです。

以前、こんなツイートをしたところ、プチ炎上しました。

いまだ「花は生活の必需品」だと考えている業者さんをたまに見かけます。
けれど、消費者の人々との意識はどんどん離れていくばかり。
もはや前提として、「花がなくても生きていける」というマインドセットで仕事をしていきませんか?

植物を育てることは「面白そう」だと伝える

そのうえで重要なのは、「植物を育てることは面白そう」だと消費者にアナウンスしていくこと
昭和時代に売れていたから、来年も売れるとは限りません。
いま、園芸業界を支えているのは高齢者層であるのは間違いありませんが、人間の致死率は100%です。
いずれ他の年齢層にもアプローチしていかなくてはなりません。
そんなとき、「植物を育てることが面白い」と思っている層だけに商品を届けていたら、先が細ります。
否、すでにそうなりつつあります。

「面白そう」と感じられることができたのは、時間に余裕があったから

そもそもなぜ、上記のような層が「植物を育てる面白さ」を理解していたのか。
このブログでも以前、記事にしましたが、簡単に言えば身近に植物があったからです。

植物と触れる機会が多く、植物を理解するための時間も長かったからこそ、自ずと植物の面白さにも理解が及んだ。
つまり、植物に触れる時間があったから。

けれど現代では、地面はコンクリートで固められた都市部に人口は集中。
そこに庭はなく、ベランダは消失。
室内は清潔になり、いよいよ植物が入り込めるスペースが減少しつつあるのです。

ゆえに、「植物を育てることが面白い」と思える機会をどうつくるのか
50パーセント超の人々が、居住空間圏内で植物を育てたことがない現状を、どう理解するべきか
今後、この2点を即急に解決し、初心者をはじめ、様々な方に提案すべきです。

プライぺートな時間を優先する傾向はますます拡大する

コロナ禍で得たもの。
それは「プライベートの時間」の大切さに気が付けたということではないでしょうか。
忙しなく働いていた生活シーンに、突如として「公」と「私」が混在する時間を過ごさなくてはならなくなりました。
「公の時間」、つまり仕事などに追われていた日々に、「私の時間」が食い込んだとき、あらゆる気づきを多くの人は感じたことと思います。
そして「私の時間」、いわばプライベートな時間が人生をより良いものにする大切な時間であることに…。

きっと、ワクチン開発などにより、コロナ禍というのは一時代のほんの一瞬のことと忘れ去られることでしょう(早くそうなってほしいですが)。
けれど、コロナ禍が過ぎても、プライぺートの時間や空間を充実させたいと願うひとは、そう簡単には減らないはずです。
ならば、園芸というジャンルにおいて何が必要なのか。
それこそ僕は、このブログのサブタイトルにもある通り、「娯楽」なのだと感じます。

「時間やおカネを掛けても大丈夫」だと思える趣味は?

あらゆる趣味には「時間」や「お金」が掛かります。
園芸だって多少なりとも、お金が必要です。
消費者にとって、これらの余裕を費やしても良いと思える趣味に選ばれる必要がある
つまり、園芸を「娯楽」化すること。
人々が楽しいと思えることを提案できる業態にまでも持っていく必要があると僕は常々思います。

園芸が楽しいと思えるひとつの理由は、自己が園芸を楽しいと感じているからに他なりません
植物を育てる生活が楽しい、園芸という行為そのものが楽しいと感じているからこそ、生きるに不要な植物を育てているのです。
では、なぜ現代では昔のように園芸の支出が減っているのでしょうか。
…というのを僕ら生産側は考え続けなくてはならないと思うのです。
未来もこの業界で食べていくためには。

この記事を書いた人

mokutaro

植物好きが高じ鉢物業界に飛び込んだアラサー男子。群馬県に移住し、毎日、食べ(られ)ない嗜好性の強い植物とまみれています。 園芸を考えるブログ「ボタニカログ」を運営中。