世界らん展ってつまらないよね
そんな意見を耳にしました。
楽しい、つまらないはそれぞれ個人の主観的な考えによるところであり、僕がとやかく言うことではありません。
ですが、その言葉が園芸関係者の口から出たのだとすると、どうでしょう。
「スペシャルナイト」ってかなりお得!?
僕は今回、はじめて「スペシャルナイト」の会場を歩いたのです。
照明が落とされた東京ドームは、幻想的。
僕が歩いた過去の世界らん展とは違う雰囲気を味わうことができました。
さらに驚くべきことは、夜の9時頃までほとんどの物販ブースが営業しているのです。
だからこそ、日中の開催と比べると、
- 心なしか混雑も少ない
- 入場チケットもちょっぴり安い
- タイムセールを行っているブースも多々ある
ナイトで足を運んだ方が、時間的にも経済的にも得じゃないのかと思うほど。
自分のペースでゆっくりと会場を巡ることができるし、なによりお店のひととコミュニケーションを図れるのがとっても良い。
SNSを通じて植物を識る
そんななか、気がついたことがあります。
植物が分かるのです。
あらゆる物販ブースに並ぶ植物がどんな植物なのか、詳しくは分からなくとも、ふんわりとイメージが浮かぶ。
つまり、僕の記憶する植物の量が増えた。
それもジャンルを越えて…。
その要因は間違いなくSNSでしょう。
毎日、何かしらのSNSを通して、日本のみならず世界中の情報が目の前に飛び込んでくる。
ときには自分の栽培している植物の「最終形態」を垣間見れたり、あるいは未知の植物が突如として眼前に現れる。
それらを他の情報と照らし合わせ、どんな名前か、どこの自生地から来ているのか、栽培方法はどのようなものか…などをインターネットなどで即座に検索。
そしてまた、今後育ててみるべきか否かの判断も並行して行っているのです。
その作業の積み重ねによって、だいぶ植物を覚えた。
結果としてドームで見た様々な植物に既視感を覚え、親近感と興味が湧き、ついには購入してしまう。
今回はそんな連続だったのです。
自身の持つ園芸情報をアップデートすればするほど、楽しみが見つかる。
知識の対象が広がればおのずと、興味の幅も広がります。
これは「趣味園芸における栽培植物の多様化」の要因なのです。
「趣味園芸における栽培植物の多様化」 の要因とは?
そもそも、園芸ジャンルの多様化はパーソナリティに強く結びついていると僕は考えています。
たとえばAさんが、育てている植物を外部に露出した(SNSなどで「僕はこんな植物を育てていますよ」と発信した)とします。
情報を受け取る側のBさんは、Aさんを「植物を育てている人」であることを認識すると同時に「こんな植物を育てている人」だと併せて認識する。
要するにBさんは、Aさんと植物を併せて、その人の「個性」をインプットする。
だからこそ、情報を発信する側のAさんは、栽培する植物を現在の立ち位置から選択するようになるのです。
どうだい?俺ってこんな植物を育ててる人間なんだよ、と。
そしてそのAさんに強い影響力があり、植物の面白さを適切に説明できている場合、Bさんとその他多くの人々は、Aさんに志向した植物を求める傾向があるのです。
さらにBさんはAさん的なライフスタイルを求めたり、Aさんの所持する植物と同じような品種を栽培し、それをまたBさんはSNSに投稿する…。
ときには誰かによってアレンジが加えられ、それをまた誰かが変えていく。
こうした連鎖によって、SNSなどから派生するさまざまなジャンルが成立すると僕は考えています。
あらゆる情報があり、購入機会があり、はじめてムーブメントが興る。
そこにパーソナルに関わる信条や思考が加味された「個性」を付随させ、その上でやっと消費者は購入段階にうつる。
だからこそ「個性」に依拠しない植物は誰からも選ばれないし、逆に情報媒体の少なかった昭和期のように大多数が揃って買うこともない。
「僕はこの植物を育てています」と言える価値観があることが大前提なのです。
植物を通した「自分探し」
そう考えると、時代の変遷によって、並ぶ植物も多様化しているはずです。
世界らん展の物販ブースにある植物群が何十年にも渡り、同じもの…というのは考えづらい。
世界らん展がつまらないと感じるのは単に、情報をアップデートできていないから。
これからの園芸に自らの足を使って、考えたことがないから。
そして、「植物を用いたパーソナリティの発現」への発想に乏しいから。
手前味噌ですが、 少なくとも僕は、この3条件を辛くもクリアしていたのだと思います。
むしろ、つまらないと感じてしまう業界人のほうがちょっとヤバい。
正直言って、情報のアップデートが足りていないし、客(消費者)の方がよっぽど敏感にトレンドを察知しています。
「ラン」というジャンルにおいて、あれほどまでに業者や団体が集結しているイベントは他にはありません。
もっとも「ラン」以外の植物も様々に取り扱われはじめています。
また、ランの種類も年を追うごとに増えているようです。
僕は会場をまわり、僕なりの感性に合う植物を探し出し、それと合致した植物に出会うことが何より楽しかった。
いわば植物をとおした「自分探し」をしたのです。
来年の「世界らん展」でも、自分を探したいものです。
「コケ好き男子」のコケ好きアピール
結局、翌日も友人を引き連れ、再度の再戦。
植物の知識がほとんどない友人でも、ブームとなりつつある某ブースの「コケ」の前では、目をキラキラとさせていました。
気づけば多くの若者がコケの前に群れているリアルな事実。
通り過ぎる男子も「コケテラリウムやりて~」と彼女に熱弁しています。
そう、これが若者の植物選びなのです。
目の前を過ぎ去ったイマドキの彼は、「コケを愛しちゃってる俺ってどうよ…」と猛烈にアピールしたいのです。
つまり、コケ好き男子というパーソナリティを彼は、コケを使って体現しようとしている…。
ちなみに僕は最近、ケープバルブ男子です。
「実生してぇ~」。
…他意はありません。