植物を室内に取り入れることは絶対に必要なのだ ~カマール・メトル(Kamal Meattle)氏の講演から~

先日、フラワービズの国際シンポジウムに行ってきました。

室内の空気を浄化!カマール・メトル(Kamal Meattle)氏の講演へ行ってきました!

賛否両論!植物が空気を浄化するということ

講師は2009年にTEDでも講演された「カマール・メトル(Kamal Meattle)」氏。植物を使って室内の空気を清浄にするという講演内容であることは事前に知っていました。ただ、この手の内容はなぜか賛否両論が多く、ガセだのデマだの、ネットをみればいろいろと意見が出てきます[*01]。

僕自身、植物が酸素を出すことくらいは知っていますし、ホルムアルデヒドなどの化学物質を吸収することは、どこかで聞いたことがあります。さらに以前よりNASAが植物を利用して空気を清浄させる実験をしていることは何かの本で読んでいます。

とはいっても、電磁波を吸収するサボテンだの、空気をキレイにすると謳われるサンスベリアなど、商売のために不確かな売り文句が付いて流通した植物は少なくありません。それゆえにどこか胡散臭さを感じてしまうのは僕だけではないはず。今回はそんな疑心暗鬼も心に残しつつ、会場に入りました。

まずはTEDの講演をご覧ください

上演ブザーが鳴り、配られた同時通訳が流れる受信機を耳に掛ける…。こんな体験からしてはじめてなので大興奮。僕の座った席からはメトル氏を直接みることができませんでしたが、なにやら会場に響く声と同時に耳元に音声が流れます。

インドの環境研究者であるメトル氏は自身も大気汚染によって体調を崩し、その経験も含めて植物と屋内環境の研究を進めてきたのです。まず、TEDの映像を観たほうがハナシが早いです。

講演内容もTEDの映像とほぼ同じだったように記憶しています。今回はTEDでの講演内容に詳細なデータが明示される…といった感じ。残念なことに同時通訳が早くてメモをする暇もなかったので、興味深い部分だけをピックアップして記録します。

空気をキレイにするなら植物を取り入れよう

前半は室内の空気のことを中心に解説がありました。

その序盤「多くの組織は賃貸のビルに入居しています。そこでもし10%の効率が上がったら?」とメトル氏は投げかけます。「その方法は簡単でビルの中にグリーンを取り入れればよいのです」…と早々に結論

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なぜならグリーンを取り入れたことによって酸素が増え、頭もスッキリとする。さらにCO₂やPM2.5なども減る。これで増益した分で賃料が支払われれば、ビルを運営する人にとっても喜ばしいことではないでしょうか、とメトル氏。

室内の二酸化炭素は作業効率を低下させる

続いて、グリーンや花は忘れ去られてしまう存在でありながら、様々な人が取り入れることを良いことだとしています。それなら何故、取り入れないのでしょうか!と話した後、あらゆる論文の研究結果を用いながら説明に入っていきます。

  • もし二酸化炭素が増加した環境下であれば、人間にどのような影響を及ぼすのか。それは二酸化炭素によって血液の酸性度が高まり、意識の低下やかすみ目、筋肉のけいれんなどを引き起こします。結果、子供が学習できない、オフィスでも生産効率が悪くなる。
  • ハーバード大学でも新しい情報が出てきていてCO₂が認知能力にかかわることが明らかになって来た。今後のデータも変わるだろう。
  • 作業効率が悪くなるのはCO₂のせいだというのは分かってきている。換気を良くして、酸素が増えたら頭が非常にスッキリする。これによってIQが高くなったり、企業も利益が出せる。
  • なのに、あらゆる組織はこの潜在性に気が付いていない!グリーンを取り入れれば良いという認識ではなく、絶対に必要なのだ。花卉を取り入れることは一流のことだという認識が必要である

他にもさまざまな汚染物質の解説がありましたが、なかでも二酸化炭素によって作業の効率が低下するというのは驚きです。

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現代では高気密な建物が増え、その分、換気に配慮しなければならなくなりました。日本では空気がきれいなので窓を開け放てば良いのですが、外気を取り入れることにためらう国もあるのです。

また、汚染物質を取り除くための機械を導入すれば良いのかもしれませんが、大きなコストも掛かってしまいます。それゆえに「室内に植物を取り入れること」が重要だとメトル氏は繰り返し述べます。

CAM植物の効能

後半は各植物がどのような働きをするのかを淡々と、そしてざっくりと解説。

  • ポトスはホルムアルデヒドを吸収し、一酸化炭素を吸収してくれる植物
  • ベッドルームにはCAMプランツを置くと良い。夜に酸素を放出するので睡眠に良い影響を与える。ベッドルーム植物ともいわれる「サンスベリア」はその最たるもので、窒素酸化物やホルムアルデヒドを吸収。また「魚臭(トリメチルアミン)」も吸収してくれる
  • スパティフィルムはベンゼン・ホルムアルデヒド・トルエン・キシレン・トリクロロエチレンを除去する

など、耳よりな情報もありました。

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メトル氏は上に挙げた「ポトス」と「サンスベリア」、そして「アレカヤシ」の3種類の植物をメインに研究しているそうです。これらの植物を適切に室内に配置すれば、コストを掛けずに健康で元気に暮らすことができると語ります。

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最後に「Knowledge Followed by Action Leads to Transfomation(行動の伴う知識は変化につながります)」という言葉で締めくくり、講演は終了しました。

もっと詳しく知りたい!メトル氏の研究

感想です。

内容が難しいこと、それから同時通訳が早くてついていけなかった[*02]ことから、空気を清浄する植物云々についての胡散臭さは正直、拭いきれていません。僕の理解力が乏しいことが問題ではあるものの、言語の壁も大きいものだと感じます…(;’∀’)。

ただ、植物を室内に置き、楽しみながら健康にも役立つのだとしたなら、こんなにも素晴らしいものはありません。それに「サンスベリア」や「ポトス」は耐陰性もあり、室内での栽培も比較的容易です。空気を清浄化することなどを知らなくても、普通に栽培している人も多いはず。

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日本では斑の美しい「ポトス・エンジョイ」などが数年前から出回り、僕も購入した記憶があります[*03]。化学的にそのデータが認められるのであれば、今後、これらの植物には大きな付加価値が付くのは言うまでもありません。

だからこそ、もっと広く、そして分かりやすくメトル氏の研究内容が知られるようになれば…。日本の園芸界もより盛り上がるのではないでしょうか。日本語でのこれまでの研究データを基にした分かりやすい書籍などの発行が望まれます

  1. 植物が浄化するんじゃなくて、植物が植えられている土が空気を浄化しているんだというのもあります。実はこのネタ、日本に限らず、世界中で議論されているテーマのひとつなのです【参照:http://www.gardenmyths.com/kamal-meattle-plants-air-purification/】 []
  2. 中には同時通訳のイヤホンを使用せず、メトル氏の講演をそのまま聞く方も…。英語って大切ですね… []
  3. ところが、うまく育てることができず、1年も経たずに枯れてしまった。なので、また挑戦しようかと考え中 []

この記事を書いた人

mokutaro

植物好きが高じ鉢物業界に飛び込んだアラサー男子。群馬県に移住し、毎日、食べ(られ)ない嗜好性の強い植物とまみれています。 園芸を考えるブログ「ボタニカログ」を運営中。