趣味の園芸2018年12月号はシクラメン特集!翌年も花を咲かせたいのはみんな同じだよね??

11月も終わろうとしているこの時期。
各地で続々とシクラメンの出荷に関する便りが届いています。
「品評会」も終わり、質も量も豊富な「イマ」が買い時です!

さて、そんな時期に発売の趣味の園芸は「シクラメン」特集

NHKテキスト趣味の園芸 2018年 12 月号 [雑誌]

12月号は毎年、決まってシクラメン情報を掲載しているようなのですが、読んで思ったことを書き記していきます。

2018年12月号「シクラメン特集」は栽培方法をメインに掲載

シクラメンを買う理由

まず書いておきたいこと。
シクラメンはあくまで「植物」です。
あるいは「鉢花」と言った方が適切でしょうか。
贈答用としてのシクラメンは徐々に取引量が減り、もはや飾るだけのアイテムではなくなってきていると僕は思います。
高い金額を支払い、枯らして終わるディスプレイは現代とは相容れません。
如何に長く育て、楽しむか。
如何にシクラメンとともにある自分を演出するのか…。
つまり植物を「栽培する」こと、これこそが前提であると僕は考えています。

園芸店にあるような「完成形態」のシクラメンに、若い消費者が目を向けないのは、完成され過ぎているからです。
徐々に枯れ行く植物よりも、花芽が伸び、開花を迎え、そして枯れ果てる。
この時間を一緒に過ごせた方が、消費者の満足度は高いはずです。
なのに「園芸種シクラメンの苗」などの販売は見たことがありません。

生産者や販売者が、目を向けるべきは消費者がどのようにシクラメンを扱うか、ということ。
恐らく買って飾るだけというブルジョアな消費者は少ないはずです[*01]。
多くは「来年も花を咲かせたい」と思い、シクラメンに手を伸ばしていると僕は感じます。

だからこそ、生産者も、消費者も、そして販売者も、趣味の園芸のようなテキストを手に取ることをおすすめしたいのです!

2018年12月号は栽培方法がメイン

前回の大きな特集は2016年12月号。

ここではシクラメンの品種紹介から栽培方法まで、あらゆる情報を俯瞰的に網羅し、大変勉強に。
特に原種シクラメンの自生地の様子などは、マニア垂涎モノでした。

そして今回、2018年12月号は「楽しみ広がる!シクラメン最前線」という題号で重点的に栽培方法を掲載しています。

そうです、2016年に比べるとわかるのはシクラメンの栽培方法をもう一度確認してみよう!ということ。

三者三様のシクラメン栽培法…だけど。

2018年12月号のなかで面白いと思ったのは、「3講師こだわりの栽培法大公開」というコーナー
園芸研究家の若松康史さん、佐々木秋彦さん、金子明人さんによる三者三様のシクラメン栽培法を紹介しています。

これを読んで感じたのは、3つの意見があることで自分の栽培環境に合ったスタイルを取り入れることができるという構成は画期的だということ。
住む地域や購入したシクラメンの状態など、園芸書などに紹介される栽培方法が一定条件におさまることって実はあまりありません。
園芸店や生産者さんの説く栽培方法もまた、ひとつとして同じものがありません。
つまり、正解がないのです。

それが困るところでもあり、面白いところでもあるのです。

例えば、生産者さんがみな同じ環境、同じ栽培方法だったら、特徴が揃ったシクラメンが出来上がります。
そうじゃなくて、自分のウチは底面給水で肥培管理はこうしている!とか、葉組み(シクラメンの葉を降ろし、生長点への風通しや日照などを確保する作業)は何回する!という試行錯誤があります。
その結果、同じ種類のシクラメンであっても大きさや形の違う商品が出来上がり、これもまた消費者にとって選ぶ要件となり得ます

2017年12月、足利フラワーパークにて

で、このコーナーをざっと読むと、それでもやっぱり共通している部分はあることに気が付きます。
底面給水鉢よりも、排水性の高い普通鉢を3人ともおススメするのは至極当然のこと。
そもそも大量の鉢を生産するうえで、簡便な管理をするために開発されたのが底面給水鉢です。

ところが自然界では、空から雨が落ち、地中深くへと染み込んでいくのが基本。
植木鉢においても、上部から株へ水が流れ落ち、鉢内の空気や老廃物を流し去るという基本的な構造があってこそ、植物への負担が少ない栽培が可能となります。
ゆえに、次の年の栽培を考えるなら普通鉢のシクラメンを購入するべきです。

…という具合に、よ~く読めば、3者とも深いところでは意見が共通している部分も多く、読んでいて楽しい!

SNSに触発されて…原種シクラメンを学習中!

次に紹介されるのは原種シクラメンの栽培方法
今年は特にSNS上で原種シクラメンが注目されていました。
夏から秋に掛けてTwitterを開けば原種シクラメンのことばかり…。
そんな投稿ばかりを読んでいたら俄然、僕も原種シクラメンが欲しくなり、「ヘデリフォリウム」と「ミラビレ」を購入。
さらにはこんなものまで…。

オランダ産の「コウム」2球を衝動買い(笑)。
まだまだ原種シクラメンがどのような「動き」をするのか分からないため、穴が空くほど読んでいます。

テキストの内容は比較的栽培が容易な秋咲き、冬咲きと、ちょっとコツが必要という春咲き、夏咲きをそれぞれ解説。
今回買った「ヘデリフォリウム」と「ミラビレ」が秋咲きで、「コウム」は冬咲きだそうです。
これらの種類について、趣味の園芸には、

一般的なシクラメンに近い管理でOK

夏に休眠し、秋から冬に咲く種類です。一般的な園芸種シクラメンと生育サイクルが近いので、栽培のイメージがしやすいのではないでしょうか。

引用元:NHKテキスト趣味の園芸 2018年 12 月号 [雑誌]

とあります。
このコメントには「園芸種を育てた人ならだいたいの栽培方法も分かるよね」という意味も含まれているような気がする(笑)のですが、逆に言えば園芸種と一緒に管理もできる、ということ。
若干、初心者にはハードルが高めのように感じますが、そもそも原種シクラメンは園芸種よりも強健で強いとされています。
むしろ園芸種も栽培できるようになるステップアップだと捉えれば、シクラメンへの認識がグッと広いものになるのではないでしょうか?

シクラメンは難しい…というのはどうして?

他の植物とはちょっと違った栽培サイクル

そもそもシクラメンはなぜか、難しい植物であるという認識が根強いです。
ある程度のガーデニング経験のある主婦の方に伺っても、「シクラメンはどうしても枯らしてしまうのよね」とういう意見をよく耳にします。

その理由は、

  • 購入後、水を与えるのを忘れていた
  • 受け皿に水を溜めっぱなしだった
  • 夏の暑い季節に大量の水を与えてしまった

などなど、広く出回る園芸植物の多くとは栽培方法が少し異なる点でのミスによるものにあると、僕は考えます
例えば多肉植物のカネノナルキとシクラメンを隣どうしで育てていたら、ついつい2つともに水をあげてしまいがちです。
けれどもセオリーに従えば、冬のあいだはカネノナルキは水を控え、シクラメンはコンスタントに与える必要があるのです。

そもそも気候が違う

その他に病気や害虫に弱いことも大きな点であると思います。
現在流通している園芸種のシクラメンは「地中海性気候」と呼ばれる地域に分布する「シクラメン ペルシカム」という種類をもとに生まれたといいます。
地中海性気候の特徴は夏は涼しく乾燥し、冬は温暖で雨が降る…ということ。
日本とはかなり違うのです。

高温多湿の日本の夏には栽培時のトラブルが多く、生産者も抱える悩みのひとつ。
冬の出荷時期に合わせるためには趣味の園芸にもあるとおり「ウェット法」で夏のあいだも葉を茂らせて栽培。
ところが、ジメジメとした気候に耐えられないシクラメンは病気で腐り、葉にはヨトウムシやハダニがつき、花にはシクラメンホコリダニが闊歩する…。
栽培リスクが少なく、簡単な「ドライ法」がやっぱり初心者にはオススメなのです。

それでも育てやすくなってきている

そのうえで長年シクラメンの栽培に従事している職場の上司に話を聞けば、シクラメンは昔よりも強くなっているといいます。
シクラメンの栽培をはじめた1970年代。
それはそれは、シクラメンの栽培が難しかったそうです。
種子を植えてもその半分は何らかの影響でロス。
ところがようやくここにきて、安定的にシクラメンを生産できるようになったのだとか。
それには長年の栽培による「勘」や「経験」があるのかもしれませんが、品種が強くなっていることも一因ではないのかと振り返ります。

「シクラメンのかほり」以降、強大なブームにより広まったシクラメン。
以降、シクラメンへの挑戦を断念していた方も、いまこそリトライしても良いのでは?
当時よりも園芸種のバリエーションは格段に増え、「青いシクラメン」も注目されています

2017年12月、足利フラワーパークにて

園芸種でなくとも、若者世代に人気の原種シクラメンとゆっくり時間を過ごすのも面白いかもしれません。

2017年2月。池袋クリスマスローズ展にて

今号の趣味の園芸とともに、ぜひシクラメンを購入してみませんか?

この本も併せて読むとベスト!

…と長く2018年12月号の内容を紹介しましたが、実はここに書いてある情報をもっと詳しく、もっと広く書かれたのが、同じくNHK出版の「もっとシクラメン」という書籍。

これは特にオススメです。
内容は原種シクラメンが多めですが、園芸種についてもぬかりなく解説。
この本がなかったら、僕はシクラメンのウンチクをここまで書けなかったでしょう(笑)。

  1. お水の商売などの商業施設や撮影スタジオならわかるけど []

この記事を書いた人

mokutaro

植物好きが高じ鉢物業界に飛び込んだアラサー男子。群馬県に移住し、毎日、食べ(られ)ない嗜好性の強い植物とまみれています。 園芸を考えるブログ「ボタニカログ」を運営中。