いま、メディアがこぞって注目する「パルダリウム」ってなに??

「パルダリウム」。
近頃、随所にその言葉を目にするのですが、一部の人にしか認知されていないようです。
しかし、「パルダリウム」の可能性は今後、徐々に大きくなるような気がしています。

今話題の「パルダリウム」って何??

あやふや!?「パルダリウム」の定義

そもそも「パルダリウム」とは何か。
まだしっかりとした定義がなされていない様なのですが、どうやらいくつかの意味があるそうです。
ひとつは、「湿性環境を水槽内に持ち込んだもの」とされ、もうひとつは「テラリウムの植物に重点を置いた言い回し」と…。

Wikipediaには、

ビバリウム
植物を育てる場合の「ビバリウム」には「テラリウム」「アクアリウム(水草アクアリウム、水草水槽など)」など再現環境ごと分けた呼称が使われる。そのため、園芸分野などで「ビバリウム」という総称した言い回しが使われることはほとんどない。また、マイナーな言い回しではあるが、「パルダリウム」という呼称も使われることがある。「パルダリウム」にも明確な定義はないが、湿性環境を再現したテラリウムのことを指すことが多い。ビバリウムの一種としてテラリウムが当てはまるという見方が正確であろう。こういう見方をする場合、テラリウムとは「陸地の生物圏を再現したもの」という意味を持つからだ。

施設の呼称と施設内の住人について
あるいは、「テラリウム」は園芸、アクアリウム、植物分野などで共通に使われる言い回しで、「パルダリウム」は植物に重点を置いた言い回し、「ビバリウム」は動物飼育に注目した言い回しともいえる。しかし、何を主役にするかは施設制作者の主観により、種別の生体の量や個体数によらない場合も多い。また、生態系を再現することを重点においたテラリウムでは、内部の環境自体が飼育・管理の対象であり、すべての生き物とその繋がりが重要視されるものであるため、そもそも、何を主役に置くかは観察者の意思に任せられる。したがって、施設を何と呼ぶかは、呼ぶ人が何の生物に深く関わっているかなど、主観的な要素や慣習に左右される。

引用元: テラリウム – Wikipedia

とあります。
つまりはその水槽内でどんな植物を育てるのか、どのような環境に設定するのかを主観的に決めることで、作った人がこれは「パルダリウムだ」といえば、それはもうパルダリウムになる…という具合(笑)。

一般的な定義は「水量」?

なのですが、大まかには以下の図が一般的な認識のようです。

文字に起こすと、

  • アクアリウム
    水槽内の大半を水が占めている。
  • アクアテラリウム
    水と陸地がおおよそ半分くらいになる
  • パルダリウム
    水が少量、あるいはまったくない
    テラリウムと呼ぶ場合もある

といったところ。

ここらへんの定義はまだまだ曖昧で、関わる人が増えていけば、少しずつ「パルダリウム」とは何たるかが定まっていくのではないでしょうか。
それに伴い、上に示した図の認識も変わっていくかもしれませんし…。
そのくらい、あやふやなのです(笑)。

なぜいま「パルダリウム」なのか

そんな「パルダリウム」。
僕は徐々に知名度を上げていくのだと感じています。
それはなぜか。


ポイントは3つ。

  1. 低メンテナンス
  2. 高カスタマイズ性
  3. 栽培記録を共有し、欲求を昇華

以下、ひとつずつ整理してみます。

低メンテナンス

現代、あらゆる農業技術が発展し、効率よく植物を栽培できるよう研究・開発がなされています。
そんな技術を家庭園芸に応用した機器やシステムも徐々に普及
ひと昔前のアクアリウムといえば、どでかい外部フィルターを買い込み、専用の蛍光灯がチラチラと眩しかったり、ヒーターの燃費が悪かったり[*01]…。
それが現代では機器やシステムの進歩が進み、よりコンパクトに、より静かに、より低コストになりつつあるのです。
その最たるものがLED照明
植物の生長に必要な波長の光を照射し、発熱を抑え、ランニングコストも低くするなど、年々、性能が高くなっています。

つまり、ひと昔前までは栽培するのに必要な、

  • 知識
  • コスト
  • 労力

などが現代では徐々に省力化
「知識」も機器やシステムがカバーし、インターネットで調べれば、すぐに情報を得ることができます。
メンテナンスの回数も減り、一般家庭でもパフォーマンスに優れた水槽栽培が可能となってきているのです。

ただし、低メンテナンスとはいえ、メンテナンスがまったく要らないという意味ではありません
水が少なくなったり、栽培する環境によっては掃除が必要となることも。
旧来型のアクアリウムに比べれば、かなりメンテナンスが省力化されている…ということです。

高カスタマイズ性

そして、手軽に「難モノ」と呼ばれる栽培の難しい植物や、美しい植物を育てる機会も増えつつあります。
そう、熱帯雨林などからの植物が人気も高まっています

(関西には[*02])水草を専門とするプラントハンターが数多くいたためだが、それはアクアリウムの世界の話。園芸とは全く関わりのない世界のことだった。この両者が結びつくきっかけとなったのは、まるで人工物のような迷彩柄をまとった植物、アグラオネマ ピクタム ’トリカラー’だ。ハンターたちが水草採取のついでに、少し水辺から離れた場所に生息する陸生のアグラオネマなども採ってくるようになり、しかも迷彩柄のパターンが産地により大きく異なることがコレクターの心をくすぐり、一気に火がついた。

引用元:BRUTUS(ブルータス) 2015年 9/15号 [雑誌]

上記引用にある通り、BRUTUSの「珍奇植物」特集にもたびたび取り上げられているような植物たちの流行もあり、パルダリウムの注目度上昇に拍車をかけています。

photo credit: isforinsects via photopin cc

さらに、こんな書籍も…。

熱帯雨林の美しく妖艶な植物を数多く紹介するプラントハンター、長谷圭祐さんの書籍です。

本書は水草趣味と園芸趣味のちょうどはざまにあり、これまで見過ごされていたこのジャンル植物を一望することができる初のガイドブックです。著者は学生時代より新種・未入荷種を探して世界中のジャングルを巡る、若干25歳のプラントハンター・長谷圭祐氏。

引用元: STRAIGHT #03MIST LOVERS -Rainforest Plants- /KEISUKE HASE | STRAIGHT – THE PUBLISHER OF BIZARRE BOOKS

普段、園芸店で目にするアグラオネマやペペロミアなどとは違う、奥深く多様な熱帯植物の数々…。
それに加え、栽培するのに難しいけれど、観賞価値の高いランや、ベゴニアなどなど…。

Elena Gaillard from New York, USA – Dossinia marmorata leaf Uploaded by Orchi
Dossinia marmorata leaf

書籍自体はストレイトというブックレーベルのオンラインショップなどで購入ができます。

もはや「未知」としか言えない様な植物が、ここにきてどんどん業界にアップデートされつつあります。
フツーに生きていたらこんな面白い植物が存在するなんて、知りもしませんよ。

栽培記録を共有し、欲求を昇華

現代では、誰かと水槽の様子やそのなかの植物の成長を記録しながら共有することができるのです。
ブログやSNSを使えば、自分のための備忘録としてだけではなく、あらゆる情報を交換することも可能。
結果、趣味のレベルも向上し、誰もが高度な技術を用いることができるようになるのです。

photo credit: Jungle Björn Attention needed … via photopin (license)

それだけではなく、植物を栽培することによる「承認欲求」も昇華されるのだと僕は考えます。
徐々に変化していく水槽内の様子を記録しては確認し、現在の出来栄えに一喜一憂する。
その繰り返しで、レイアウトの練度は増し、美しい景観を施せるようになっていく。
同時にSNS上には固定ファンが応援&アドバイスをくれるのです。

詳しくは以前の記事に書いたので、お時間のあるときにご覧ください。

いま、メディアが大注目!

取り上げる雑誌が増えています

そんなこんなで、いま注目が集まる「パルダリウム」。
数年前からパルダリウムを取り上げた雑誌が出版され、最近だとパルダリウムの実例が豊富なこんな雑誌も発売中。

本書の「パルダ/アクアリテラリウムで使いやすい〇〇」コーナーは必読。
パルダリウムを楽しむための管理方法もイラストを交え、分かり易く解説されていて参考になります。

それから。
ついに「趣味の園芸」でも、数ページだけパルダリウムの特集がなされていました。

オトナになった今だから、「パルダ」りたい!?

ちなみに僕。
10代の半ばに60㎝の水槽を部屋に持ち込み、以来、金魚や川魚を飼育。
学校帰りは、いきつけのアクアショップへ通い、水草などを買ったりしました。
が、サラリーマン家庭のお小遣いではちょっとハードルの高い趣味。
水槽内という小さな世界を自分なりに操作するには、ある程度の手間とお金が掛かる…ということもこのときに知ったのです。
結局、緑が青々と繁るアクアリウムを夢にみたものの、泣く泣く断念したのでした。

以降、徐々に興味は「植物」へと移り、今に至ります。
ところがここ数年、「アクア」の流行が園芸にも及び[*03]これは再チャレンジするチャンスかもしれないなぁと思うようになり…(笑)
オトナの僕にはチョットだけ、お財布に余裕もありますし(^^;。

今後、間違いなく話題を呼ぶだろう「パルダリウム」というキーワード
頭のどこか隅に置いておいても損はないのでは?

  1. 家族から「うるさいし邪魔!」だの「なんか臭い!」だの「ヤダ、汚い!」だの「なんなのよ!この電気代は!!」と反感を買うことは必死の光景で…(笑)。 []
  2. 筆者注 []
  3. 逆も然り? []

この記事を書いた人

mokutaro

植物好きが高じ鉢物業界に飛び込んだアラサー男子。群馬県に移住し、毎日、食べ(られ)ない嗜好性の強い植物とまみれています。 園芸を考えるブログ「ボタニカログ」を運営中。