こんな記事を見つけました。
中国でも多肉植物が人気!?
中国では多肉植物の不法輸入が増加
中国 多肉植物が大人気、不法輸入量は4-5倍増
多肉植物は基本的に丈夫で栽培が容易なものであるため、国内外園芸市場で人気を呼んでいる。
(中略)
現在、淘宝(タオバオ)で多肉植物の種子などに対する代理購入サービスは盛んになり、産地は韓国、日本、オランダなどが一般的である。韓国産多肉植物の代理購入を取り扱うネットショップの多くが通関代行も行い、代理購入費用は価格の1%に相当する。
北京出入境検験検疫局によると、国外の多肉植物が中国に持ち込む場合、厳しい審査プロセスがある。近年、多肉植物はよく売れているため、郵送量が増え続けている。最近、税関で発見された多肉植物は4-5倍増となった。
引用元:中国 多肉植物が大人気、不法輸入量は4-5倍増 | 新華ニュース 中国ビジネス情報
いま、中国でも多肉植物が人気だそう。それを如実に表す事件が、中国のニュースサイトで閲覧できます。内容は以下。
密輸貨物は違法多肉植物だった
女が大量に運び、空港で押収韓国から空路で広州市に入った中国籍の女が所持していた荷物のX線検査で国内への持ち込みが禁止されている貨物が含まれていたことが判明。中身を確認したところ、女は多肉植物を大量に国内へ運んでいたことが明らかになった。
9個見つかった箱の中には合計1000株近い多肉植物が積まれ、重さは18キロ。広東検験検疫局が12月1日に発表したこの事件は広州空港検験検疫局が近年摘発した違法な繁殖用植物苗の中でも最多の例だったという。
引用元:密輸貨物は違法多肉植物だった – 社会 – 日中新聞
これぞまさに「爆買い」。
どんな種類の多肉植物を購入したかは定かではありませんが、1,000株といったら、それなりの金額にはなるはず[*01]。ニュースには、「検験検疫局の職員は関連の法知識および検疫上の処理方法などを女に説明し、押収した植物を検査のために実験室へ送った。[*02]」とありますが、その後、多肉植物の行方が気になるところです…[*03]。
中国の多肉ブームを垣間見る
これらのニュースが気になり、ネットサーフィンをすると、とあるブログに行きつきました。
That’s wicked!!: 最近 多肉が買えない理由分かったかも!?
このThat’s wicked!!さんでは、中国での多肉ショップの紹介や、「多肉本」も豊富に発行されている事情も掲載。記事では現地の情報がかなり詳しく書かれています。
僕も、中国で発行されている多肉植物の本にどのようなものがあるのか探りましたが、どれもここ2~3年の間に発売されたもの[*04]。しかもそのバリエーションと言ったら…。
日本の「多肉本」も近年では飽和状態ですが、中国の多肉本もそれに負けず劣らずの種類みたいです。ちなみに日本で発行されている多肉本の中国語訳もあるようです。
中国の多肉ブーム。もしかしたら嬉しいことかも?
こう書くと恐らく「何だよ!今度は多肉植物かい?アイツらがマグロの味を知ってから、日本じゃ漁獲量が減ってんだ!マグロだけじゃねぇ、ウナギなんてどこ行っちまったんだい!」と、急に目を吊り上げる方がいるかもしれません。
でも、これって多肉植物愛好家にしてみたら、それほど悪いことではないかもしれません。
多肉植物は、食糧などとは違って、基本的に消費されてなくなるものではありません。むしろ、殖える(笑)。それも、栽培スキルが上がれば上がるほど、そう簡単には枯らさないようになります。生産体制が整い、栽培技術が確立すれば、いずれ、ビジネスとして大量に多肉植物をつくる企業が出てくるかもしれません。
そうなった場合には、ほんの少し価格の安い「Made in China」の多肉を買うという選択肢が僕らに与えられるようになる。それに、普及すればするほど、あらゆる交配種が作られ、その植物文化も発展するかもしれないですし。
デメリットもある
病害虫の問題
ただし、先ほどの違法密輸のニュースの続きに、こんなことが書いてありました。
近年、多肉植物は鉢植えの中でも国内外でとりわけ人気が高まっている植物の1つだ。多肉ブームは生花販売者たちに恰好の商機をもたらし、海外で買い付けを行った新品種をあらゆる手段で国内へ持ち込み販売する業者も現れている。しかし検験検疫局の職員によると、多肉植物は中国国内への持ち込みが禁止されている植物だという。株本体が生態環境に影響をおよぼしうる外来種であるのみでなく、茎の部分にはカイガラムシなど病原体を媒介する害虫が付着している恐れもある。また、多肉植物は繁殖力が非常に強いため、一度国内に流入すると農業生産および生態環境の保全に脅威を与える存在ともなり得るという。
そもそも多肉植物のほとんどは、中国にとっても外来種のはず。環境によっては日本では考えられないほど、多肉植物の繁殖力が強くなることだって有り得ます。また、中国産の多肉が大量に生産できたとしても、日本の検疫で輸入できない可能性だってあります。
多肉植物は面白い。その面白さが世界中に広まることは悪いことではありません。また、それによる恩恵を授かることができるかもしれません。けれど、デメリットがあるのも事実。これらをしっかりと理解したうえで、世界中に多肉ファンが増え、一緒に楽しむことができれば…と思います。
2018年1月14日:追記
日本の多肉植物が海外産に追いやられる
昨日、テレビで「中国で多肉植物が流行している」という内容の番組が放送されたそうです。
この記事を書いたのは2015年ですが、やはりどの国でも多肉植物ブームの息は長いと改めて感じます。それとともに、この記事を書いたときにはあまり想像もしなかったことが今後、起こるような気がしてなりません。
それは、生産性の低い日本の多肉植物が海外産の多肉植物に追いやられるということ。むしろ現時点で考えられないほうがおかしい。
中国ではハオルシアなどの高価な多肉植物が日本の何十倍もの価格で取引されているといいます。したがって、日本よりもより質の良い植物を、より生産効率の良い体制で大量につくろうと狙う企業がないはずがありません。もし大量生産に成功し、現在国内で出回る多肉植物と同程度の価格帯で海外産の多肉植物が店頭に並んだら…。
それを踏まえて日本の農家の「教育」や「交配技術」を鑑みても、旧態然で非生産的な体制のままの農家が多く、到底、最新技術を取り入れた大資本の企業に勝てるとは思えません。そのうえ、あいにくなことに多肉植物は根っこを切れば(土を落とせば)輸入が容易であることも重大な要件。水をたえず与えなければならない鉢物や、すぐに足の出る食品であれば、その商品を移動できる範囲が決まり、自ずと配送コストも決まります。
ところが、根を切っても空調と湿度管理さえ怠らなければ、さほど品質の劣化しない多肉植物は案外あらゆる国へと輸出入ができます。現に日本にも海外産の「エケベリア」が近年、数多く輸入されています。その生産地はおとなりの韓国や高度な生産体制を誇るヨーロッパ諸国など。国内の「高品質」で「多品種」の栽培技術は果たして今後も守ることができるのでしょうか。
園芸は娯楽
以前からこのブログに書いていますが、僕は無理だと思います。同じような品質でも、価格の安い海外産と国産の植物が並んだら、申し訳ありませんが僕は、海外産の植物を購入します。なぜなら「園芸」は突き詰めていけば「娯楽」だから。
別に口に入るでもない。枯れてしまったらまた買えばいい。買ったらそのとき楽しめればいいのです。
園芸店に並ぶ植物はどれもそんな風に仕立てられ、並べられているような気がします。それを承知で客側も買っているのです。母の日、父の日、クリスマス…。時期が過ぎれば枯れてもいい。贈った時だけ豪華であればいい…。
でも、もうそんな時代は終わりました。否、終わりにしなければなりません。
日本が海外産と競っていくためには、品質の上に立つ「ブランド力」や「サポート体制」が必要です。永くその植物と付き合っていく「コト」を上手にアピールしなければなりません。ICTが急速に発達しつつあるいま、ただ作ればいい時代はとうに過ぎ、消費する園芸ではなく、生活に密接にかかわる園芸、まさしく「娯楽を楽しむ園芸」にシフトするべきです。
それに加えて、低いとされる日本の生産力を高めることも重要。
どちらにしろ、この番組で報道された事象は上に書いたことの一端でしかありません。次にどう出てくるのか、僕も予想がつきません。ただしこのままだと日本の多肉植物業界もとい園芸業界も危ういのではないかという危機感から書いてしまいました…。もっともっと応援しないといけないですね…(^-^;。
- 日本でお手軽な多肉であればおよそ250円。これ×1000だと、25万円…。もしくは、ある程度珍しい植物は日本では安くても1,000円。それを1000株だと、諭吉100人かぁ~…。あはははは~… [↩]
- 参考:密輸貨物は違法多肉植物だった – 社会 – 日中新聞 [↩]
- 廃棄処分されちゃったのかな? [↩]
- 日本の多肉本もありました [↩]