「花開く江戸の園芸」展に行ってきました。武士園芸にちょっと共感。

最近、様々なフィードアプリで「見た行った」との報告が入ってくる展示会情報。この情報が非常に気になっていました。僕も行きたくて、行きたくて。

「花開く江戸の園芸」展に行ってきました

で、行ってきました。

江戸東京博物館ってこんなトコロ…。

両国駅を降りて…。

国技館の横を通って…(おいおい、こんな場所でバーベキューかよ!?)。

着きました!

江戸東京博物館。お目当ての展示会は「花開く江戸の園芸」展です。

館内は写真撮影禁止のため、ここからは撮影画像なしでレポートします。が、心許ないのでまだ行かれていない方は、公式ウェブサイトと合わせてご覧ください(参照:花開く江戸の園芸│江戸東京博物館)。

展示内容は6つの章に分かれていました。入り口から出口まで、その章を順繰りに辿っていくような構成です。今回の投稿は、その章ごとに僕の感想を綴っていきます。

序章 プラントハンターの驚き

展示場入ってからすぐに、欧米のプラントハンター「ロバート・フォーチュン」が、日本の園芸文化の特異な点を発見したとの解説。要点は、

  • 英国を凌駕するほど、庶民にまで「花を愛する国民性」が当時の日本にはあった
  • その結果、園芸植物の巨大な需要が生まれ、巨大な生産地帯が成立していた

とのこと。

この時点でなんだかワクワク。フォーチュンが日本から持ち出したアオキの絵がまさにボタニカルアート。細かいところまで描写されていてマジマジとみてしまいます。

第一章 花と緑の行楽文化

第一章からは17世紀の名所めぐりや、江戸における植木屋の経営などを解説しています。

僕は東京都民ではないし、東京都のどこに名所が現存するのかよく知りません。けれど、不忍の蓮池は当時からあったとか、吉原では桜の樹を移植していただとかが妙に面白い。開花シーズンに桜を持ってきて植え、終わったら引っこ抜く。すげぇよ、江戸。

また、六義園などをつくった「植木屋」の活躍。染井の植木屋・伊藤伊兵衛が出版した「花壇地錦抄」は庶民にも読むことができ、江戸の園芸文化に大きく貢献したとのこと。その後、民間の庭園、植木屋の庭園(ここで植物が売られていた)が誕生し、名所として発展していったそうです。

当時は某ネズミのテーマパークなんてなかったし、行楽と言えばこういった名所をめぐることが主流だったのでしょうか。だとすれば、今の僕らよりも「あれあの花は○○でございましょう」なんて、知っている植物も多かったはず。さらに、植物の楽しむべきポイントとか、敏感な感性を持っていただろうし、もし江戸の人が今も生きていたなら一緒に東京を歩きたいものです。

第二章 普及する植木鉢と高まる園芸熱

個人的にはこのブースがいちばん面白かったです。

植木鉢というものが誕生してはじめて植物の運搬が容易になり、植物が植わったまま販売することができるように。あまりにも園芸文化が普及したため、日用品(たとえば茶碗や湯飲み)に穴を空け、植木鉢として転用したとか。

だからかもしれませんが、現在のプラスチックで作られた鉢よりも非常に趣があるのです。鮮やかなのです。プラスチックの鉢も安価で扱いやすいのですが、現代に生きる僕らはもう一度、工芸品チックな植木鉢をみなおしてもいいのかも

そういえば、神代植物公園に行ったときに、食器を再利用して鉢に替えるという展示がありました。こういう習慣が文化として残っていれば、もっと面白い園芸文化がいまも続いていたように思います。エコだしね。

また、このころの絵には頻繁に「サボテン」が描かれています。当時すでにアメリカ大陸圏からはるばる日本へ渡来していたようです。僕はジョウロを持って微笑む女性の後ろに、ウチワサボテンが描かれたポストカードを購入しました。「座しき八景の内 上漏の松の雨」というものです。気になる方はどうぞおググりください。

第三章 武士の愛した不思議な植物たち

ここで展示されている資料には、美しく派手目な植物を記録したものもなかにはありますが、後半からは「万年青(おもと)」「松葉蘭」「南天」「福寿草」「長寿草」など、地味目なものが目立ちます。これらは武士が愛でた植物の類だそうですが、なぜ好きなのか、なんとなく理解できるから悲しい(笑)。

そう。良く考えたら、多肉植物コレクターと共通する概念がいくつかあるのです。僕が思う共通点は、

  • 斑の入り方を楽しむ
  • 葉の形状を比べる
  • 葉の色を吟味する
  • 全体の姿を評する(割とコンパクトのものが多い)
  • 描写時の鉢の角度を考える
  • 手間の掛かることを誇張せずにはいられない
  • ついつい同系の植物を並べて観察し、カッコいい名前を付けてしまう

など、多肉植物だけでなく、盆栽・山野草などの展示会などでも見られる要素がいくつもあるのです(笑)。こういった感性は、日本人にメンメンと受け継がれてきたのでしょう。ただ悲しいかな、分からない人には分からないのですが(笑)。

第四章 江戸園芸三花 ―朝顔・花菖蒲・菊―

金魚の品種改良などもそうですが、美しいものをとことん追求し、さらに美しくしてしまう日本人の心意気が感じられる展示でした。

一見、花をみて朝顔とは分からないまでに変異した種類や、鮮やかな品種の菖蒲を歌舞伎役者の背後に並べた錦絵など、このころには相当腕のある栽培エキスパートが各地にいたのだと思われます。

さらに彼らは沢山の菊花を組み込んだ、菊人形も作っていました。現代に生きる僕らにも「楽しい」と思えることを悉く催していたみたいです。会場にはイミテーションで作られた菊人形がありましたが、みれば超派手。

その一方で、地味目な植物を集めていた武士らにとっては、そのように興業を狙った菊人形などを嫌っていたそうです…。なんかわかるなぁ~…(笑)。流行に敢えて乗らない強がり、みたいな…。

終章 園芸文化の明治維新

明治維新により、外国らからの文化が日本へ怒涛のように押し寄せてきました。西洋から薔薇などを愛好する文化も流入し、一方では地味目な植物を愛でていた武士園芸は人々から理解されなくなっていったそうです。残念…(笑)。

こうして、現代の「ガーデニング」へと継承されていき、いまの「日本の園芸」があるのでしょう。とはいえ、派手目な植物が好きな人、地味目な植物が好きな人など、江戸のころのように階級なく愛好できるから、現代に生きていて良かったと感じます。それでも、鉢植えまでも審美する精神は劣っているのかもしれませんが…。

図録を買ったヨ

このようなことから、江戸の園芸文化や自然観から学ぶことも沢山あると感じた展示会でした。

博物館でお土産を購入!

展示場を出るとすぐに、関連商品の売る販売ブースがあります。

僕はここで3点のお買いもの。

  • 花開く江戸の園芸 図録:2,300円
  • 平成23年度 第2回企画展 神代植物公園開園50周年特別展 「徳川三代将軍から大名・庶民まで、花開く江戸の園芸文化―その保全と継承―」冊子:300円
  • 「座しき八景の内 上漏の松の雨」ポストカード:105円

これらをおかずに飯を食い、お盆は過ごそうかと思っています。相模の庶民が浸る江戸文化。なんて贅沢。…僕のように友達が減っていくので、良い子は真似せず遊びなさい(笑)。

この記事を書いた人

mokutaro

植物好きが高じ鉢物業界に飛び込んだアラサー男子。群馬県に移住し、毎日、食べ(られ)ない嗜好性の強い植物とまみれています。 園芸を考えるブログ「ボタニカログ」を運営中。