多肉植物の越冬時の備忘録(主にアドロミスクス)

はじめに

昔、運営していたアドロミスクスだけのブログ「アドロミスクス研究部」[*01]の記事を読み漁っていました。すると、ちょうどこの季節に書いた記事[*02]が出てきたので、せっかくだから載せようかと思います。

なぜか…。それは、失敗はなるべく共有した方がいいのではないか?と思っているからです。[*03]それに、PCに保管しているだけでは何も役に立たないと思うので…。

いまとは文体も違うし、僕の実践している栽培法とも若干違うところがあります。そういったところは、昔に書いたニュアンスをなるべく崩さないように、また、極端に間違ている部分などは修正しました。

また、この記事は関東地方のとくに神奈川県の気温を想定して書かれたものです。読者の方の環境とは異なる場合があることをご留意いただければ、と思います。

それでは、以下より記事をお読みください。

越冬時の備忘録(アドロミスクス研究部から)

私の記憶上、いちばん損害の大きかった、今回の「蒸し風呂温室事件」。

これは忘れてはいけないし、同じ過ちを2度と起こさないよう、対策を考えるべきだと思い立ちました。
そして、枯れ方が顕著で代表的なアドロを選び出し、数パターンを記録。
これにより、分かったこと、改善すべきことを記しておきます。

蒸し風呂状態になった原因

まず、確認しておかなければならないのは、蒸し風呂状態になった原因は何だったのだろうということ。
それには、2つ、理由があると思うのです。

  1. 簡易温室の窓(ジッパーで開閉できる、テントのようなもの)を開けなかったこと。
    同じ温室内に、アドロ以外にもクラッスラやアロエ類も育てていたので、寒さから守るための処置でした。
  2. 強い日差しを遮る寒冷紗などの、温室を覆うものがなかったということ。
    これをしっかりしていれば、少なくとも急激に日差しを浴びて、葉が枯れるということは、なかったかもしれません。

しかし、最大の原因とは、日々の確認を怠っていたということ。
アドロミスクスを育て、そろそろ3~4年目の年。
だいぶ「こんなもんだろう」という勘が働き、温室内の状況がどうなっているのかをあまり見ていませんでした。
特に断水状態にさせる冬季には、生長期である春や秋と違って、水を与える日数が減るため、観察する日数も減ってきてしまいます。
ここは、大いに反省すべきところであると思う。

蒸し風呂状態とは

ところで、「蒸し風呂状態」とは、何か。
2011年冬から2012年春にかけて、我が温室内で起こった事件による名称。

損傷の激しかった株
損傷の激しかった株

要するに、温室内を密閉したために、季節が変わり、外気温が上昇し、温室内が蒸し風呂のような状態になること
さらに、日光を遮る遮蔽物をしていない場合は、強烈な日差しを浴び、まるで昼間の時間だけ真夏のようになってしまうこと。

蒸し風呂状態の次は「灼熱乾燥地獄」

「蒸し風呂状態」だけでも、アドロミスクスの体力を大きく消耗させる要因になるのですが、温室が蒸し風呂状態になっていることを気付かなければ、さらに状況は悪化します。
今度は、鉢にあった水分が蒸発し、温室も、鉢内も、カラカラになってしまうのです。

結果、

  1. 強い日差し
  2. 日中の高温(夜はぐっと冷えるので温度変化が激しい)
  3. 水不足

となり、植物を枯れさせるに足りる状態になるのです。
いくら、あまり水の必要としない多肉植物であっても、かなり厳しい状況だと思うし、デリケートな植物は簡単に枯てしまいます。
アドロミスクスであれば、marianiaeのヘレイ系や、葉の薄いmaculatusなどはイチコロ。
特に高価なものであれば、数日の「灼熱乾燥地獄」で瞬間的に枯れるはずです。

冬にも適度な遮光・気温調節の管理

ここからが重要な部分。
同じ過ちを起こさないための対策です。

やはり、重要なのは冬だからと言って過少に判断しないことだと思います。
僕が犯した今回のミスの大元は、ここだと思う。

  1. 冬だから温度が低い。
  2. 温度が低いから、温室内であれば日中はちょうどいいだろう。
  3. 温室内の温度を上げるためには、遮蔽物はあまり必要ないのではないか…。

このような考えが無かったとは言い難く、冬でも適切な処置は必要だったのです。

では、その適切な処置とはどのようなものか。考え付く限りで、まとめてみました。

対策1:寒冷紗を使う

強い日差しを避けるため。
また、温室内の急激な温度変化を避けるため。
これにより、葉焼けや温度変化による体力消耗を防げます。

対策2:温室の密閉はしない

多少は温室の窓を開けておくべき。
温室内の温度をある程度一定にする目的と、蒸発した水分を飛ばすため。
今回、枯れてしまったアドロの一部分は、ムシムシとした環境によって、カビたり、根腐れを起こしたものもありました。
数日に一度は、全開放して、風を当てるのもいいかもしれません。

対策3:完全な断水は良くない

冬は断水。
これはアドロミスクスを育てるうえで基本ですが、完全な断水はいけません。
いくら休眠しているとはいえ、多少は水分を必要としているようです。
なので、1か月に1度は、鉢の中の空気を入れ替えるためにも、たっぷりと水をやってもいいのかもしれません。

対策4:休眠とはいえ、定期的に観察する

休眠期に入ってしまうと、生長しないため、正直言ってつまらないです。
あまり変化がありません。
しかし、それでも変化を探すのが実に大切であることを、今回の一件で痛烈に実感しました。
もう少し多めに観察していれば、「蒸し風呂状態」になっているのを早い段階で気づけただろうに…。

対策5:深い衣装ケースを使う

これは、私自身のプライベート備忘録です。
簡易温室に入らないアドロは、実は衣装ケースに入れ、越冬しています。
ところが、今年初めて使った衣装ケースのアドロも、多く枯れてしまいました。
いい機会なので、こちらも少し、考えてみます。

衣装ケースを考える

DSC_3168

浅い衣装ケースは、土が乾かず、根腐れ多発。

今回、どうして枯れたのかというと、時間が経っても土が乾かず、いくつかのアドロが根腐れを起こしてしまったのです。
それだけでなく、真っ白なカビが生え、原型をとどめていないものまでありました。

ところが、別にもうひとつ、衣装ケースを持っているのですが、そちらで育てたアドロは特に問題なく、冬を越しました。
この原因はなんだろう…。

深いと空気の循環があるから?

思いつくのは、暖かい空気が天井に行き、冷たい空気が下に行く空気の循環。
深ければ深いほど、この循環が上手く起こったのかもしれません。
逆に浅いと、うまく循環が起こらず、衣装ケース内の湿度もずっと高かったのかも。

とはいっても、これらは私の単純な妄想なので、一切科学的なデータは存在しません。
気になる方は独自に調べていただければ…。

気温のデータから、ビニールを外すのはいつか

話は簡易温室に戻り、いつ、ビニールを外した方がいいのか。
今年は3月の中旬ごろにビニールを外しました。
昨年は確か桜が開花したころだったので、今ぐらいではなかったでしょうか。

ということで、正直、いつビニールを外した方がいいのか分かりません。
ならば、平均気温のデータを使って、適切な日にちを観てみよう…。

横浜の平均気温

調べるとありました。
このデータは最高気温でのようです。

横浜

1月 9.8
2月 9.9
3月 12.7
4月 18.2
5月 22.4
6月 24.7
7月 28.4
8月 30.3
9月 26.4
10月 21.2
11月 16.6
12月 12.2
19.4

参照:全国平年値(1971~2000年)・月別最高気温

これをグラフにしてみると…。

image[47]

さらに、ベンケイソウ科の植物は、終日20℃から生長がはじまるので、グラフをみれば4月ごろが適当[*04]。

いくつかの資料をあたると、戸外に出すのはやはり4月からという記述を目にしました。

ということで、今年は3月にビニールを取り外しましたが、できれば4月まで待てということ。
やはり桜が咲くというのは「暖かくなってきましたよ」という合図と受け取ってもいいのかもしれないですね。

ご注意

現在の僕は、3月の初旬にビニールを外します。だいたい、河津桜が咲き終わる頃の「啓蟄」と呼ばれる時期にあたります。なので、現在の見解と大きく変わっていることをご留意ください。

蒸し風呂&灼熱乾燥地獄に強いアドロ

さて、ここまで枯れたアドロばかりを紹介してきましたが、あの、「蒸し風呂状態」の中でも、「灼熱乾燥地獄」にも耐えきったアドロがあります。

Adromischus filicaulis ssp marlothii
Adromischus filicaulis ssp marlothii

ほとんど無傷。

Adromischus filicaulis ssp marlothii
Adromischus filicaulis ssp marlothii

そのほかにも、松虫錦や達磨クーペリーなども無事でした。
何故これらが無事だったのか、よく分かりませんが、共通するのは、安いというところ…。
安いものは簡単に増やすことができたり、生命力自体が強かったりするので、そういうところもあるのかも。

とにかく、価格の高低に関わらず、枯れた要因、枯れなかった要因はあるはずです。
「これかな?」と思ったら、備忘録がてら、また書きます。

いま決めよう。冬の予定

これらを踏まえ、ここで冬の予定をもう立ててしまおう。

  • 遮蔽シートは必ず設ける
  • 週に1度は換気
  • 月に一度は水遣り
  • コマメな観察
  • 衣装ケースはなるべく深いものを使用する。
  • 10月にビニールを掛け、4月に外す。
  • 日差しは、3月から梅雨過ぎまで、注意せよ!

そして、ここに書いたことを再読するのを忘れないようにしよう。

読者の方へ注意点

最後に注意点。
ここまで長々と、だらだらと書いてしまいましたが、ここに書いたものは私の見解です。
簡単に行ってしまえば、私の「勘」です。
そのため、読者さんの環境や育成方法と合致しないことがあります
というより、多分ほぼ合わないと思う。

なので、強く信用しないでください。
ブログの注意点にもありますが、不利益を被った場合など、責任を負いかねます。
これらは私の備忘録であり、私の育成下での内容です。
参考にする場合は、読者さんのアレンジを加え、読者さんの環境に合った方法でご利用ください。

  1. 現在もウェブサイトは残っていますが、大半の記事は削除しました。 []
  2. 2012年4月10日に投稿しています。 []
  3. このことについてはそのうちタラタラと書いていこうかと思います。 []
  4. この場合、当時の僕が言っているのは春秋型の植物について。ベンケイソウ科のなかには様々な生育パターンがあり、ここで述べていることは正確ではありません。 []

この記事を書いた人

mokutaro

植物好きが高じ鉢物業界に飛び込んだアラサー男子。群馬県に移住し、毎日、食べ(られ)ない嗜好性の強い植物とまみれています。 園芸を考えるブログ「ボタニカログ」を運営中。