納豆偏食家の憂い。サバ缶がバカ売れしている記事をみて思ったこと。

サバ缶バカ売れのニュースを読んで

以前、僕は納豆が大好きだ、と書きました。僕は、生まれてから25年間の70パーセントくらいは多分、納豆を食べています。
だからこそ、納豆のない生活など考えられない。

僕の記憶では納豆が思うように手に入らなかった時期が、過去2回ありました。

ひとつは2011年の「東日本大震災」のとき。茨城県にある納豆工場が被災し、供給ができなくなったのです。
それだけでなく、包装に使われるフィルムも生産できなくなったため、しばらく納豆を食べられない日々が続きました。

もうひとつは2007年。
これはもう悪夢としか言いようがない。
テレビ番組にダイエット食品として納豆が紹介されたのです。
スーパーにある納豆という納豆はすべて買い漁られ、どこへ行っても手に入らない。
ところが、後になってその番組はねつ造であったと報道がされると、店先には売れ残りの激安納豆が山積みに…。

この出来事を僕は、ブログに載せようと思って記録していました。
しかし、最後まで文章を完成させることができず、今日に至ります。

そして先日。
インターネットのニュースサイトにはこんな記事が投稿されていました。

「サバ缶」が売れすぎてスーパー品薄、売り切れ またもやTVのダイエット特集で買い物客が殺到!!!

J-CASTニュース 8月6日(火)17時35分配信

「近所のスーパーからサバ缶が消えた」「サンマ缶ばかりだ」―――ツイッターで「サバ缶」がスーパーで買えなくなったという報告が相次いでいる。実際に都内のスーパーに問い合わせると売り切れていたり、一人一缶のみという制限がかかっていたりするところもある。
テレビ番組のダイエット特集で、サバ缶を食すと、やせるホルモンが大量に出る可能性がある、などと説明したのが原因のようで、納豆、バナナに続くパニックに発展しそうな気配もある。

(中略)

「納豆ダイエット」はテレビ局の捏造だった

これは本当なのか。都内にある複数のスーパーに問い合わせてみたところ、やはり飛ぶように売れているらしい。大田区蒲田にあるスーパーでは、
「品薄のため、お一人様一缶という販売制限をさせて頂いております」
ということだった。荒川区東日暮里のスーパーでは殆ど残っていないという。店員は、
「テレビのダイエット特集が影響しているようです。こんな事態になるとは予測できなかったので在庫が足りない、とメーカーには言われていまして、暫く入荷は不安定になると思います」
と話していた。
テレビのダイエット特集の影響でスーパーから商品が無くなるのはこれまで何度も起こっている。07年1月にはフジテレビ系の「発掘! あるある大辞典II」で納豆がダイエットに効果的だと紹介され、スーパーやコンビニから納豆が消えた。また、08年9月にTBS系「ドリーム・プレス社」でタレントの森公美子さんが「朝バナナダイエット」に挑んだところ、バナナの売り切れ店が続出し、またもや店頭からバナナが消えた。サバ缶がこれらと同じ道を歩くような雰囲気だが、本当にサバ缶を食べればやせるのかどうかはよくわからない。
フジテレビ「あるある大事典」で放送した納豆ダイエットについては、番組で紹介したデータや登場した大学教授のコメントなどに捏造があることが発覚し、同番組は打ち切りになっている。

引用元:「サバ缶」が売れすぎてスーパー品薄、売り切れ またもやTVのダイエット特集で買い物客が殺到!!! (J-CASTニュース) – Yahoo!ニュース

この記事を読んで、僕はこう思いました。

また同じ轍を踏んでいるような…。
底辺ブログではありますが、備忘録がてら投稿しようか。
いや、いまここで投稿しなかったらいつやるの?今でしょ!!

そう思い立ち、過去のデータを引っ張り出して文章を加筆・修正しました。
古いデータなので、引用元もありません。
そして非常に長いです。
何故長いのかと言えば、この文章に僕の憤りが、僕の苦しみが詰まっているからです(笑)。
さらに言えば、2007年というと、僕はまだ10代です。
世界の中心が自分でしたので、文章が尖っています。
ご容赦ください。

お暇な方、そして納豆を愛している方、ダイエット食ブームに疑問を持つ方、共感していただけると幸いです。

以下、本文です。


納豆ショック

2007年、新年早々大変奇妙な事件がわが家の台所を騒がせたことがあった。どこのスーパーマーケットやコンビニに行ってもあるものがないのである。

それは納豆である。あの、関西ではあまり人気がないといわれ続けたうえ、外国人(一部日本人)には「NATTOU=くさい、まずい」でおなじみの納豆が、である。

事の発端は、関西テレビ系列番組「発掘!あるある大辞典2」という番組で放送された『食べてやせる!!!食材Xの新事実』という放送分で、納豆を朝晩毎日食べ続けるとやせるという内容であった。

以前も寒天ブームなどが起こり、同じように店頭ですぐに売切れてしまう現象が起こった。しかも、寒天工場に空き巣が押し入り寒天を大量に持ち去ったという事件まで発生したことも記憶に新しい。

まさに石油ショックならぬ、納豆ショック(寒天ショック)である。店頭で品薄状態が相次ぎ、納豆コーナーに納豆がひとパックも残らないような現象が全国で起こった。この事態に大手納豆メーカーは緊急のお詫びの記事を放送から5日後、各新聞に掲載した。さらにその翌日には読売新聞、毎日新聞もその異様な社会現象についての記事を掲載した。実際に付近のスーパーマーケットやコンビニに夕方になってから行くと、納豆が棚に残ってはおらず、朝晩毎回のように納豆を食べていた私にはかなり精神的な苦痛になった。はっきり言うと私はまさかこんなに納豆の需要が高くなるとは思ってもいなかったし、賞味期限の切れた納豆はことごとくゴミに出していたのが後から悔やまれる。

納豆を探すため、近所の店をいろいろ探し回っているときのこと。あるコンビニに行くと納豆が沢山並んでいた。どこへ行ってもなかったので、奇跡とさえ思った。すぐさま、その納豆が並んでいる棚に近づき、納豆を掴もうとしたそのとき。横からいきなり手が伸び、ひとつ、またひとつと、手にとっていく女性が。そして私が手にした納豆は最後のひとつ。女性は四パックほどの納豆(1パック三個入りだから、12個も納豆を食べるつもりか)を手にし、半ば抱えながらレジへ運び、やっとのことで会計を済ませていた。

その女性をみて気になるのは、これ以上やせてどうする?と思うくらいやせているのである。なのにまだやせる気か?とつぶやかせるほどスラーッとした体型で、足も細く「一体何を食べているの?」と聞きたいくらいウエストも細い。そんな人までが「ダイエットのために」という名目で流されてしまう。女性の納豆欲しさへの努力=やせる努力には驚きである。

その後、何日か納豆を探しにスーパーマーケットやコンビニを彷徨ったが、一向にお目当ての納豆に出会うこともなく、とうとう、納豆そのものにすら出会うこともなく月日が流れていった。

テレビ局の捏造が発覚

しかしこの文章を書いて間もない頃、事態が大きく動いた。なんと、この情報を流した番組が納豆に関する情報の一部に捏造があったことを認めたのである。

捏造があった部分は、関西テレビの発表で五つ。

  • 使用された写真が他人のものである事
  • 大学教授の発言がそもそも無かったこと
  • 番組内で行った人体実験そのものを行っていなかった
  • 納豆を朝2パック食べた場合、朝晩1パックずつ食べた場合の比較結果が架空のものだった
  • 番組内で使用したグラフは許可なく使用したものだった

という内容である。

この発表の翌日(07年1月21日)の読売新聞には「発覚!ウソウソ大事典」と社会面に大きく報道された。記事には〈視聴者も吟味を〉とあり、「健康というテーマに対し、視聴者の側も安易に反応しすぎている」と書いてある。

まさにその通りである。たった一回、たった一時間の一方的に流れてくる放送に、あれほどの人々が納豆へ群がる社会現象は異常すぎるほど異常だ。その上、やせるためにどんな納豆でも食べる、納豆なら何でもいいという精神が私は許せない。納豆にはそれぞれ大豆の産地があり、豆の大きさがあり、そして何よりも、納豆を食べる醍醐味とも言える美味しさ(ウマミ)がある。それを大量に、無差別にかごの中へ入れていく。そんな消費者が本当にやせられるであろうか。

その記事が出た翌日、新たに読売新聞はこのような報道を新聞に載せている。

〈「あるある捏造」抗議1000件〉

この問題で、関西テレビに寄せられた抗議や問い合わせの電話は、21日夜までに計227件、キー局のフジテレビには800件以上。内容は「あの番組が信用できなくなった」「信じていたのに裏切られた」などの批判が約55%で、「過去の番組にも問題がなかったか調べてほしい」という声もあった。

そしてその翌日の読売新聞のインターネットニュースには、番組の打ち切り、関係者の処分の報道もされ、「捏造」の文字が並ぶ中またしても、

<番組ねつ造>視聴者からの苦情止まらず 9200件超える

関西テレビ(大阪市北区)制作のテレビ番組「発掘!あるある大事典2」で、データやコメントがねつ造されていた問題で、同テレビは千草宗一郎社長の減俸などの処分と番組打ち切りを発表したが、視聴者からの抗議や苦情、問い合わせが止まらない。同テレビとキー局のフジテレビ(東京都港区)など系列各社に届いた声はこれまでに計9200件を超え、23日の処分発表後は「処分が甘い」の声も寄せられ始めている。

NHKと民放が設立した第三者機関、放送倫理・番組向上機構(BPO)にも、視聴者から抗議のメールが寄せられている。「信用できなくなった」などの内容で、24日までに約50件にのぼった。BPOは「(今回の問題に限らず)総務省から厳重注意を受ける番組が最近、複数あった。早急に対応を検討する」としている。【北林靖彦、濱田元子】

そしてその数時間後の報道、

視聴者からの抗議、1万件に=「あるある」ねつ造問題で

関西テレビ制作の「発掘!あるある大事典II」でデータがねつ造された問題で、視聴者からの苦情や問い合わせが約1万件に達した。問題発覚後、系列27局への電話やメールは23日までに計9200件を超えた。24日も関西テレビだけでも500件以上が寄せられた。

23日夕に発表した社内処分に関する同局への苦情は2日間で60件を超え、「処分が甘い」とするものが目立ったという。

テレビ局などにクレームがこんなにもきている、という報道であるが、「視聴者も吟味」という事を考えるとおかしな話だ。

一方的に流された情報を安易に信じ込んで、何も考えずに「やせるから、やせるから」と大量に納豆を消費し、いざその情報が誤りだと気づくと、今まで一方的に入ってくる情報に対して初めて反論する。それも「待ってました」とばかりに一斉に。そしてクレームをつけたことでスッキリして、まだ「情報に踊らされている」事に気がつかず、また新しい情報を信じ込む。このような悪循環にどっぷりとはまり込んで、自分が現時点でどのような立場、状況に立たされているかということに、気づいていない人が大多数なように感じるのである。

一体、この事件は誰が悪かったのだろうか。

確かに、嘘の(捏造された)情報をながした放送局も悪いが、自らの判断を誤り、踊らされた消費者にも責任はあると思う。どんな報道をなされても、納豆を買うか買わないかの最終的な判断は、消費者が自ら考え、行動してから下すものであって、放送局や、店側の判断によるものでは一切無い。それを、熟考しなければならなかった(そもそも、ひとつの食品で「痩せる」と言う事に対して、消費者、あるいは視聴者は疑問がなかったのか)消費者が、それを怠ったが為に起こったのが今回の騒動である。一種の群衆的パニックに踊らされた事に対する反省と言うものは、この消費者らにあるのだろうか。

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結局この番組は打ち切りとなり、世間は「捏造の責任は…!?」という方向へ動いて行った…。

いちばん許せなかったこと

私が、特に許せないのが、そのような「流行」によって正常な判断や区別がつかなくなってしまった人達である。先にも述べたが、どの銘柄、どのような豆の大きさ、どのような納豆なのかを判断せずに、「納豆を食べれば痩せる。ならどの納豆でもいいから、買ってしまえ」という一種のパニック的な買い方が、もっとも腹ただしい。

納豆にはそれぞれ、大豆本来のテイスト、その商品にあった「たれ」「からし」、そして産地や種類による納豆の粒の大きさがある。それら複合的な要素によって、様々な「味」が構築される。その様々な味を楽しむのが、ある種「通」の食べ方なのである。よって、その日の気分によって食べる納豆が異なってくるのだ。だが、そのような平穏な日々を覆したのが、これらの騒動であった。

騒動のさなかには、どこのスーパーやコンビニ、デパートに行っても、納豆が無い。私自身、一番不味いと思っていた納豆すらない。ということは、普段、納豆に興味の無かった人間が、いきなり買い始めたということ。事実、朝からスーパーに並んで、納豆を買い求める客が後を絶たなかったと、当時スーパーの店員は話していた。それも、開店と同時に、買えるだけの納豆は買ってしまうのであろう。いわゆる、「大人買い」である。

そもそも、納豆と言うのは、大量に買ってはいけない、と私自身思っている。なぜなら、納豆は保存に他の食品より気を遣わなくてはならないからだ。納豆は「発酵」して作られた食品である。発酵というのは、生きた菌類が種の繁栄のために増殖する事による現象であって、ある意味、食品が「生きている」ということである。そんな「生きている」納豆は、納豆菌が増える事によって、当然味も変わってくる。特に、温度の高い場所に置いておくとアンモニアのような、鼻に抜ける感じの「味」がするのである。こうなると、その味ばかりが気になってしまい、食べられなくなるのである。

話はそれてしまうが、これを防ぐために我が家では、冷蔵庫に「納豆スペース」を設けている。納豆を入れるためだけの冷蔵室があるのだ。その冷蔵室は温度が最低に設定してあり、夏場でも味の変化が極力起こらないようにしている。さらに、納豆を買うスーパーは厳選し、24時間営業(ということは冷蔵庫も温度の変化が少ない)のスーパーで買うよう心掛けている。とくに夏場は、スーパーへの行きかえりの時間で味が変化してしまうことが考えられるため、自動車での移動は欠かせないのだ。

これほどまでにこだわりのある食品が、ある日を境に「ダイエット食品」として、無暗に食べられてしまうこと。納豆を普段食べない、はたまた嫌いだというのに食べた人も多かったのではないだろうか。そのときに感じた納豆の味はどうだったろう。果たして美味しかったのか。想像するに、「良薬は口に苦し」とばかりに飲み込んでいた人もいなくはないはずだ。むしろ、そんなにまでして食べるなと私は言いたい。

いちばん言いたいこと

現在、いろいろな食品で、様々な騒動が起こり、食品に対してかなり注意を払うようになってきた。当然、テレビ番組での放送も減ってきてはいる。しかし、年に数回起こる「○○ブーム」に踊らされる人は後を絶たない。果たして、いまも寒天を食べ続けている人はいるのだろうか。果たして、トマトジュースを毎日飲み続けている人はいるのだろうか。たとえいたとしても、その数はごくわずかであり、ブームに乗ったが数日で辞めてしまったという人の方が圧倒的多数ではないのか。

しかしその裏で、毎日食べ続けているという人は必ずいる。しかもそのような人にとってそれらは、たばこを吸うとか、お酒を飲むとかと同じく「ライフスタイル」に食い込んでいる食品であるはずだ。であるならば、ダイエットブームによって食品が店頭からなくなれば、ある日を境に毎日の生活が一変するのである。そのブームが続く限りは、普段の生活が営みづらくなるはずなのだ。


以上、心の叫びでした。

で、今回のサバ缶。

発端は山形県民にはスリムな人が多く、そこでは普段からよくサバ缶を食しているとのことでした。
現状では、メーカーでも在庫が不足していて供給が不安定になっているとのこと。
だとすれば、この山形県民は普段のようにサバ缶を食べられる状態にあるのでしょうか。
はたまた、山形から離れ、別の街で暮らす山形県民も、どうでしょう。
僕も先ほどスーパーの陳列棚をのぞいてきたが、サバ缶コーナーには「入荷までお待ちください」との張り紙がしてありました。
このような現象が全国で起こっていると考えると、僕の受けた「納豆ショック被害」と同じように苦しんでいる人がいるはずです。
あのときから消費者は何も変わってはいない。

痩せたい一心でブームに乗るのも分かりますが、普段からその食材を口にしている人のことも考えてほしい。
たかが納豆、されど納豆。
たかがサバ缶、されどサバ缶。
人によって価値観が違うことを忘れないで欲しいと思います。

また、僕が思うに、運動せずにサバ缶を食べても痩せられないと思う。
カロリーを消費するのは内臓や筋肉であって、人それぞれ代謝の仕方も違う。
逆に言えば、「ホルモンがはたらいているから」と心置きなく大食いして、むしろ太る人が続出するのでは…。
そんな気がしてなりません。

自分にも言えることですが、痩せる努力をしないと痩せないのです。
絶対。
ある意味、サバ缶を食べ続けることも痩せる努力だろうし。

さて、このブーム。
今度どのような展開をみせるのでしょうか…。
そして、山形県民の方々は普段通りにサバ缶を食べているのでしょうか…。

この記事を書いた人

mokutaro

植物好きが高じ鉢物業界に飛び込んだアラサー男子。群馬県に移住し、毎日、食べ(られ)ない嗜好性の強い植物とまみれています。 園芸を考えるブログ「ボタニカログ」を運営中。