待ちに待った『はつみみ植物園』を読む!西畠清順さんを理解するなら『そらみみ植物園』とあわせて読むべし!!

とうとう出ました!やっと読めました!西畠清順さんの著書「はつみみ植物園」です。

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『はつみみ植物園』を読む

待ちに待った発刊

ページを開いてすぐ、こんなコトが書かれています。

そんな忙しい日々に、ときおり鳴る、本書の編集担当者さんからの電話。
「清順さん、お忙しいとは思いますが、はつみみ植物園の原稿のほうはどうですか?」
「もうすぐ書き終えますよ。いま佳境なのでもうちょっと待ってください」
「清順さん、そのセリフは聞き飽きましたよ……もう一年以上も同じように、『佳境だから』と言ったままじゃないですか!ちなみに大手ネット書店さんには先日、6度目の出版延期の通知をだしました。予約してくださっているお客さんは、もううんざりしていますよ!こんなの、前代未聞ですよ!」

引用元:はつみみ植物園

そんなことが実際にあったかどうかは、知る由もありません。しかし、予約してからというもの、発売延期のお知らせが大河の名前を冠するネットショップから何度も来たのは事実です(笑)。

その分、「はつみみ植物園」に対する期待感は大きくなるばかり。

読むと語りたくなる植物ウンチク

いざ読んでみると「そらみみ植物園」に続き、内容が実に楽しい。この「楽しい」という意味を掘り下げてみれば、誰かに話したくなるウンチクにその正体があると感じます。

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日常生活のなかで、植物に関係する話って多分、ほとんどしないかと思います。植物関係の仕事に就いているか、あるいは園芸などの趣味がある人でないと、植物になんて思考が及びません。

でも、周りを見渡せばそこらじゅうに植物があって、身の回りにあるあらゆるものは、植物を「もと」にして出来ていたりします。それだからか案外、植物の話は誰にでも通じるし、意外な人物がとんでもない植物ネタを持っていたりするのです。話してみなければ分からない。

そんな植物の話をするためには、やっぱりネタの収集は不可欠で、「はつみみ植物園」はその利用にもってこい

注目したいポイント

僕が共感したのは、「違いが大事」という章。このなかの「なぜ野菜はおいしくなくて、果物はおいしいのか」というタイトルではじまるページがもっとも印象的でした。

野菜とは、植物でいう根っこや茎、葉っぱなど自分の体そのもの。だから″食べられたくない″ワケだ。植物にとって自分の体そのものを誰かに食べられるメリットなどどこにもないわけである。道理で、不味くなるわけだ。

引用元:はつみみ植物園

全くもって、その通り。そもそも「野菜が不味い」という前提すら気がついていませんでした。気づいていないというよりは、子供時分に親などから「ほら、野菜は美味しいでしょう?」みたいに食べさせられたせいで、「不味い」と考えること自体をしていなかったのだと思います。

でも、よくよく考えたら、確かに不味い。いや、美味しい野菜は多くあるのですが、果物と比べると種類の違う美味しさであるように思うのです。本書では一方で、果物は積極的に鳥や小動物に食べられたいから美味しくなるとも書かれています。

と、気づかなかったり、知らなかった「植物の基本的な原理」や「植物の理屈」が「はつみみ植物園」では多く登場しています。前作の「そらみみ植物園」と比べると、植物のマニアックな品種紹介が少なくなり、若干、植物学寄りであるような気が…。

ただ、清順さんなりのユニークな視点や、つい吹き出してしまいそうなライティングは前作と変わらないものがあります。

さらに前作の「そらみみ植物園」は、武蔵野美術大学の学生が挿絵を描いていたようですが、今回「はつみみ植物園」では多摩美の学生がイラストを担当しているそうです。そのひとつひとつを見ていくのも、はつみみ植物園を深く鑑賞するポイントです[*01]。

もう少し欲しかった「植物のトリビア」

その他、清順さんのプロフィールや、これまでの活躍がざっと紹介されています。ところがこの後半の約70ページ、清順さんのファンにしてみれば、だいたい知っている内容。むしろ、この本で改めて紹介する必要はあったのかな?と…。

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もしかすると、忙しさのあまりネタ探しや執筆が捗らず、後半は当初のページ数を保つために差し障りのない情報を入れ込んだのでしょうか…。憶測ではありますが。もう少し「日本人が知らないと恥ずかしい素朴な植物の常識やトリビア」を詰め込んでほしかったなと思います。

オススメは2冊読むこと

とはいえ、待ちに待った「はつみみ植物園」は、読んでみるといつの間にか顔がニヤけ、植物好きの人が放つ情熱が文字を通して伝わってきます。「僕も同じことを考えていた!」とか、「全然知らなかった!」みたいな植物ネタが固定観念に埋め尽くされた脳を襲うのです。

まだ「はつみみ植物園」も「そらみみ植物園」も読まれていない方。できれば、そらみみ植物園と合わせて読むことをお勧めします

面白いので、あっという間に読み進めることができるし、何より清順さんの「生き様」を俯瞰できるのがこの2冊であると僕は思います。

「はつみみ植物園」には、これまでの活躍も簡潔にまとめられているので、はじめて清順さんに触れる方でも分かりやすいのです[*02]。

次、「○○みみ植物園」が出るかはわかりません。けれど、2017年には初の恋愛と植物をテーマにした本を出版予定とも表紙のプロフィールにはありました。これがホントなら、気になります!

  1. 個人的には中村結衣さんのイラストが美しく好きです []
  2. 僕としては、ホントは植物トリビアを載せてほしかったのですが… []

この記事を書いた人

mokutaro

植物好きが高じ鉢物業界に飛び込んだアラサー男子。群馬県に移住し、毎日、食べ(られ)ない嗜好性の強い植物とまみれています。 園芸を考えるブログ「ボタニカログ」を運営中。