サボテン絶滅の危機。趣味家はまず、サボテンを大切に育てよう…。

衝撃的なニュースに出会いました。

サボテンはサンゴの次ぐ危機に瀕している

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あまり注目されてこなかった「砂漠地帯」

サボテン全体の31%にあたる約500種が、人間の侵入によって絶滅の危機にひんしていることが、5日に発表されたサボテンを対象とした初の世界規模の調査で分かった。
自然保護の政府間組織、国際自然保護連合(IUCN)によると、今回の結果により、サボテンは地球上で最も絶滅が危惧される植物種に仲間入りし、絶滅危惧レベルが哺乳類や鳥類より高く、サンゴの次位に位置することになるという。
今回の調査を率いた、IUCNのサボテン・多肉植物専門家グループのバーバラ・ゴーシュ共同代表は「評価の結果は衝撃的なものだ」と話し、「サボテンの絶滅危機度がこれほど高いのは全くの予想外だった」と続けた。

引用元:時事ドットコム:世界のサボテン、約3割に絶滅の危機 研究

絶滅の恐れがある植物の中でも、その危険性は高く、さらにはこれまであまり注目されてこなかったのだとか。

植物種の絶滅の可能性はあまり明らかにされておらず、推定30万種のうち評価が行われているものは1万9374種にとどまる。サボテンは文化的に重要な植物群であり、基本的にアメリカ大陸の乾燥した環境に分布している。また、長く人類はサボテンを鑑賞園芸用、食用、および薬用にしてきた歴史がある。この地域が直面する困難にもかかわらず、熱帯林などほかの環境に向いている保全への関心はこの地域に寄せられていない。

引用元:サボテンが直面する破滅的な危機 | Nature Plants | Nature Publishing Group

サボテンの重要な役割

自生地でのサボテンは、食物連鎖の重要の一端を担っていて、シカやコヨーテ、カメなどの水資源となっている。

photo credit: DSC04804 via photopin (license)
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その他、サボテンの花にはハチドリ、コウモリ、昆虫などが蜜を吸い、生態系が絡み合っているのだそう。

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サボテン絶滅の危機、その原因は…。

この危機の原因は、農業用地の拡大や、宅地・商業施設の開発にある。

 サボテンにとっての最大の脅威は、農業用地の拡大で、これはメキシコ北部と南米南部で特に顕著となっている。一方、沿岸地域を原産とするサボテン種は、宅地造成や商業開発によって個体数が縮小されており、またブラジル南部では、ユーカリ植林への土地転用によって少なくとも27種が被害を受けている。この内の一部はすでに絶滅危惧リストに記載されているという。

引用元:時事ドットコム:世界のサボテン、約3割に絶滅の危機 研究

結果として、乾燥した土地でサボテンを食べ物などに利用している生物にとっては、広く影響が出る可能性がある、と記事では結ばれています。

砂漠でも生き抜くサボテンは、強い。そういうイメージがありましたが、人間の繁栄のために棲むところなくし、歩けない植物は途絶えるしかない…。いくらサボテンとはいえ、生きる場所が無ければ、生きていけないのです。

『建てるべかざる所に人工を建設』

そんなことを考えていたら、こんな言葉が頭をよぎりました。

大自然は慈母であると同時に厳父である。厳父の厳訓に服することは慈母の慈愛に甘えるのと同等にわれわれの生活の安寧を保証するために必要なことである。

引用元:日本人の自然観

これは寺田寅彦氏の言葉。日本人は自然の厳しさを軽視して、西洋からの科学で自然を押さえつけようとしている…と警鐘を鳴らしています。

photo credit: via photopin (license)
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続けて、

昔の日本人が集落を作り架構を施すにはまず地を相することを知っていた。西欧科学を輸入した現代日本人は西洋と日本とで自然の環境に著しい相違のあることを無視し、従って伝来の相地の学を蔑視して建てるべかざる所に人工を建設した。そうして克服しえたつもりの自然の厳父のふるった鞭ひと打ちで、その建設物が実にいくじもなく壊滅する、それを眼前に見ながら自己の錯誤を悟らないでいる、といったような場合が近頃頻繁に起こるように思われる。

引用元:日本人の自然観

日本人について言及されていますが、もはやこの問題は世界的規模に及んでいます。「天恵の享楽にのみ夢中になって天災の回避のほうを全然忘れている」ともあり、80年前に書かれた言葉は、いまはより強く危機として響いてきます。

そんなサボテンを大切に育てたい

いつか、しっぺ返しが来るかもしれない。疫病か、自然災害か…。人間が生きていくことは、もちろん重要なことではあるけれど、自然と共生していける方法も、しっかり考えないといけない。

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そして、サボテンを趣味としている僕らは、これまで以上にサボテンを大切に育てていかないと…。重要な資源を拝借しているのだから。そして、何かあったとき、帰るべき場所に戻せるように…。

この記事を書いた人

mokutaro

植物好きが高じ鉢物業界に飛び込んだアラサー男子。群馬県に移住し、毎日、食べ(られ)ない嗜好性の強い植物とまみれています。 園芸を考えるブログ「ボタニカログ」を運営中。